その他不倫相手から確実に慰謝料を取るための示談交渉術
パートナーが不倫をしていることを知ったら、誰でも大きなショックを受けるだろう。その結果、不倫したパートナーをどうしても許すことができず、離婚を選ぶ人がいる一方、離婚はせずに夫婦関係の修復を図ろうとする人も少なくない。もちろん、その場合でも「泣き寝入りはしたくない」「慰謝料を取って償いをさせ、浮気相手を2度と近づかせないようにしたい」と思うのは当然のことだ。 とは言え、裁判沙汰になれば法廷で争わなければならず、手間も費用もかかると二の足を踏む人も多いのではないだろうか。そのような人のためにあるのが、「示談」という方法で、これを使えば、裁判などの大ごとにせずに問題を解決できる。ただし、示談を成功させるためには、法律の基礎知識を身に着け、きちんと手順を踏んで交渉を進めなければならない。 示談をするメリットやデメリット、示談交渉のやり方、示談書の作成方法などを解説する。
示談のメリット・デメリット
示談とは、何らかの紛争が起きた場合に、裁判という方法を取らず、当事者の話し合いによる合意という形で紛争を解決することだ。例えば、不倫や交通事故などの民事事件や、暴行、窃盗などの刑事事件で、加害者が被害者に対して慰謝料や損害賠償金などを支払うことにより被害者の許しを得るもので、示談が成立すれば、刑事事件であっても不起訴あるいは刑事処分が軽減されるケースが多い。
このように、示談による紛争解決は、加害者にとって大きなメリットがあるが、被害者にとってはどんなメリットがあるのだろう? 不倫問題における示談のメリットとデメリットを紹介する。
メリット①早期に問題解決できる
慰謝料などを請求する際に、示談交渉を行う大きなメリットの1つが、問題解決までの時間を短縮できることだ。調停や裁判は、家庭裁判所を通じて行われるために、決められた手続きを踏まなければならない。家庭裁判所は、多くの案件を抱えているだけに、調停や裁判の申立てをしても、すぐに対応してくれるわけではない。
また、調停は月に1回程度のペースでしか開催されないため、話し合いがスムーズに進まないこともある。裁判ともなれば、弁護士を立てるなどしてお互いの意見を主張し、不倫の立証も行わなければならない。手続きが複雑な上に、判決が下るまでに時間がかかり、裁判が長引けば3年を超えるケースも出てくる。そうなれば、弁護士費用を含めた経費もどんどん膨らんでいくだろう。
一方、示談は互いに合意さえすれば、すぐに決着をつけることができる。複雑な手続きも必要はなく、お互いの都合に合わせてスケジュールを組むことができるため、交渉の機会を設けるのも簡単だ。双方ともに冷静に話し合う準備があれば、問題解決にかかる負担を最小限に抑えられるのだ。
メリット②不倫関係を清算できる
パートナーの不倫発覚後も離婚は望まず、夫婦生活を続けたいと思うのであれば、まずやるべきことは、パートナーと不倫相手の関係の清算、及び不倫相手を2度とパートナーに近づかせないことだ。しかし、民法では、慰謝料などの請求についての規定はあるが、パートナーと不倫相手の接触を禁止したり、不倫した人を処罰したりすることはできないため、不倫防止の決め手にはならない。
そこで、示談が重要な役割を果たすことになる。示談では、慰謝料についての交渉だけではなく、「パートナーと完全に手を切って2度と接触しない」といったことを不倫相手に誓約させることができる。さらに、後ほど詳しく解説するが、示談で合意した内容を示談書にまとめることで、不倫相手に対する拘束力が生まれ、示談書に違反すれば裁判に訴えることも可能になる。そのため、示談を行うことは、不倫の再発防止の有力な手段になるのだ。
メリット③慰謝料の増額が見込める
慰謝料は、不倫などで受けた精神的苦痛に対して支払われる損害賠償金だ。慰謝料の金額は、精神的苦痛の大きさによって決まるため、訴訟を起こして慰謝料を請求する場合、裁判所が不倫の内容やパートナーとの結婚期間、子供の有無などさまざまな要素を考慮し、判例を参照しながら請求額を決定する。その際、パートナーと離婚するなら、「夫婦関係を維持できないほどの精神的苦痛を受けた」として、高額な慰謝料が認められるケースもあるが、離婚しない場合は、数十万程度の慰謝料しか請求できないことも多い。
一方、示談交渉で慰謝料を請求するのであれば、裁判所の介入がないため、話し合いで合意さえすれば、どれほど高額な慰謝料でも相手から受け取ることができる。特に、不倫相手が社会的に地位の高い人だったりすると、不倫していたことが世間に知られる前に早期解決することを望むだろうし、経済的に余裕があれば、相場よりも高い慰謝料を支払うこともいとわないはずだ。
メリット④人に知られずに済む
示談には、紛争を穏便に解決できるというメリットもある。パートナーと夫婦生活を続けるのであれば、パートナーの不倫が会社などに知られて信用を失うような事態になるのは避けたいところだ。しかし、調停や裁判で慰謝料を請求すると、パートナーが不倫していた事実が公になってしまう恐れがある。
例えば、調停を利用する場合、裁判所は平日の日中しか営業していないため、仕事を休んで出頭しなければならなくなる。また、裁判になれば、弁護士を立てて争うことになるので、弁護士との打ち合わせにも時間を取られるし、裁判の進行次第では当事者同士が法廷に立たなければならないケースも出てくる。
「世間の口に戸は立てられぬ」というが、そんなことを繰り返していると、不倫の噂がどんどん広がり、会社中の評判になってしまうのも時間の問題だろう。その点、示談なら当事者同士が内密に会って交渉を進めることができる。
デメリット①相手が交渉に応じない時もある
一方、示談をする際にデメリットとなるのが、こちらの出した条件に相手が合意しないケースがあることだ。不倫の示談の場合は、不倫を裏付ける証拠がないと、そもそも相手が不倫したことを認めない可能性もあり、そうなると示談交渉を始めることすらできない。また、不倫の事実を認めたとしても、「パートナーに強引に関係を迫られた」などと抗弁して、慰謝料の支払いを拒んだり、減額を求めてくることも考えられる。
調停や裁判では、あらかじめ進行手順が決まっているので、それに従って段取りを進めていけばいいが、示談の場合は相手が合意しない限り交渉が成立することはない。先ほど、「示談は早期に問題解決できる」とお伝えしたが、相手が合意に前向きでない時は、逆に交渉が長引く恐れもあるので要注意だ。
デメリット②強制執行ができない
示談は、双方が合意の上で成立させるものだから、当然その取り決めを守る責任があるし、合意内容を記載した示談書に違反すれば、違約金などを支払う義務が生じる。しかし、示談書はあくまで私文書であるため、法的拘束力はなく、相手が慰謝料や違約金を支払わなかったとしても、財産の差し押さえなどの強制執行ができない。
従って、相手に支払いを強制するには、改めて裁判を起こして勝訴するといった段取りが必要になるのだ。ただし、後ほど解説するように、示談書に法的拘束力を持たせるようにする方法もあり、それを使えば強制執行も可能になる。
示談の手順・方法
示談による問題解決は、被害者にとってもさまざまなメリットがあることがわかった。実際、不倫相手への慰謝料請求などでは、家庭裁判所による調停や裁判より、示談を選ぶケースの方がはるかに多い。しかし、今までに示談をした経験のある人は少ないだろうし、不倫相手と会って交渉することに不安を感じる人もいるだろう。
示談交渉では、必ずしも話がすんなりまとまるとは限らず、事前の準備が足りないと相手が交渉に応じない場合もあるし、手続きにミスがあったりチェックが甘かったりすると自分が望んでいたような結果にならないこともある。示談を進める手順や、交渉の方法について詳しく見ていこう。
不倫の証拠をつかむ
不倫を裏付ける証拠もないまま示談に臨んでも、相手が不倫の事実を認めない可能性がある。そのため、示談を持ちかける前に、まずは証拠集めをしなければならない。不倫の決定的な証拠があれば、相手も言い逃れができず、交渉に応じるしかなくなるだろう。
また、法的に有効な証拠があれば、示談交渉が決裂しても、裁判に訴えて慰謝料を請求することができる。裁判で慰謝料請求が認められる証拠とは、「2人が手をつないで歩いていた」「キスしていた」といった親密な関係がわかるだけのものではダメで、「2人でラブホテルを利用した」など、肉体関係を持ったことを証明できるものでなければならない。
しかし、パートナーと不倫相手に気づかれないように尾行や張り込みをして、暗い照明の下で2人がラブホテルに出入りするシーンをカメラやビデオで鮮明に撮影するのは至難の業だ。その点、探偵社などの不倫調査のプロなら、証拠映像を確実に押さえることができるし、慰謝料請求の際に必要な不倫相手の氏名・住所などの情報収集も可能なので、併せて依頼しておきたい。
交渉の方法①相手と直接話し合う
示談交渉の方法はいくつかあるが、まず思い浮かぶのは相手と会って話し合うことだろう。相手と直接話せば、不倫の経緯や相手の事情、気持ちなどもくみ取ることができるため、交渉がスムーズに進み、お互いに納得できる形で示談を成立させられる可能性も高くなる。また、代理人を立てると、最終的な判断について一々本人に確認する必要があるため、示談金の金額などのすり合わせを行う際にも時間を取られるが、当事者同士の話し合いならその場で結論が出るケースもある。
交渉を行うに当たっては、こちらから相手に連絡を入れて、会合の日時を決める。その際、慰謝料の金額や支払期限など示談の主要な条件についての自分の要望も伝えておくと、協議を進めやすくなるだろう。また、会合当日は、交渉が公正に行われたことを後から証明できるように、相手との会話を録音しておくことが望ましい。
交渉の方法②書面でやり取りする
パートナーと不倫をした相手と顔を合わせたくないという場合は、内容証明郵便などを使って書面でやり取りする方法もある。「内容証明郵便」とは、通知書を郵送した事実と通知書の内容を郵便局が証明してくれる書留郵便で、裁判でも証拠として採用される。
これを利用して、慰謝料の請求などを行い、相手がそれに対する回答をまた書面で送り返すといったやり取りをすれば、お互いに顔を合わせることなく交渉を進められるので、精神的ストレスも軽減できるだろう。また、双方の主張を記録に残せるため、後戻りすることなく交渉を進展させられるのも利点の1つだ。ただし、書面の作成、発送、受け取りには、直接会って話すより時間がかかるため、短期間で不倫問題を解決したい人には不向きな面もある。
交渉の方法③弁護士に委任する
中には、交渉力に自信がなく、自ら不倫相手と交渉することに不安を感じる人もいるだろう。そのような場合は、弁護士に依頼することを考えてもいいだろう。弁護士に示談を委任すれば、自分が同席しなくても交渉を進めてくれるし、交渉が決裂した場合は慰謝料請求訴訟の手続きまで一貫して請け負ってくれる。
ただし、弁護士に委任する時は、最初に着手金を支払い、示談が成立した時に別途成功報酬を支払うのが一般的で、総額数10万円~100万円程度の費用が掛かる。また、示談が成立しなかった場合でも、着手金は戻ってこない。高額な慰謝料を請求しても、相手にそれを支払う余力がなければ弁護士費用を賄うことができないので、相手の経済力を見極めた上で弁護士に委任するかどうかを決めなければならない。
示談書を作成する
示談交渉が成立したら、その内容を記した示談書を作成しなければならない。交渉の場で、相手がしおらしい態度を見せて「パートナーとはきっぱり別れる」「慰謝料をきちんと払う」などと言っても、口約束だけではそれが本当に守られるかどうかはわからないからだ。そのため、パートナーとの接触禁止の誓約、慰謝料に関する取り決め、誓約に違反した時のペナルティなどを記載した示談書を作っておくことが重要になる。
示談書は、裁判によらずに双方が和解したことを証明する契約書で、強制執行の効力はないものの、契約内容を守るべき民法上の義務を負うことになる。また示談書は、訴訟になった際に、裁判所が事実関係を判断する証拠としても利用されるため、不倫が行われたという事実を含め、取り決めた内容を明確に文書化しておかなければならない。
署名・押印させる
示談書の本文は、手書きである必要はなく、途中で書き損じて修正したりしなければならないことを考えると、むしろパソコンで作成する方が効率的だろう。ただし、署名・押印は、必ず本人がしなければならない。当事者の人数分の示談書を用意し、書面の最後に当事者全員が自筆で住所、氏名を記入し、氏名の末尾に押印する。押印する印鑑は三文判でも構わないが、シャチハタはダメだ。
示談書を交わす際には、当事者全員が集まるのが効率的だが、顔を合わせたくない場合は、示談書を郵送して、署名・押印をしたのち返送してもらうというやり方もある。
入金確認をする
示談書を取り交わしても、そこですべて完了したわけではない。約束通りに支払いを行わない人も少なくないため、期日までに入金されたかどうか、しっかり確認することが重要なのだ。もし、取り決め通りに慰謝料が支払われない場合は、支払督促の申立てや訴訟などを起こして示談金を回収することも検討しよう。
「支払督促」とは、債権者の申立てに基づいて、簡易裁判所が相手に金銭の支払いを命じる制度で、それに対して相手が異議申立てを行えば、裁判に持ち込まれることになる。また、督促によって相手が支払いを行った場合でも、入金が遅れたことで大きな損害を被ったのであれば、遅延損害金を請求することも可能だ。
示談書作成のポイント
示談には、財産の差し押さえなどの強制執行の効力がないことはお伝えした通りだが、きちんと示談書を作っておけば、紛争解決のための有力な武器になる。示談書に不倫の事実がはっきりと記載されていれば、法的に有効な証拠となるし、取り決め通りに慰謝料が支払われなければ、裁判を起こして支払いを命じることもできるからだ。
しかし、示談書の内容が曖昧だったり、記載するべき項目が抜けていたりすると、後々悔やむことにもなりかねない。一度示談書に署名・押印したら、内容の変更や取り消しができないからだ。示談書に盛り込まなければならない項目や書くべき内容について解説する。
不倫の事実の記載
まずは、パートナーと不倫したという事実を相手に認めさせ、その内容を示談書に記載しなければならない。それによって、後になってから相手が「不倫した覚えはない」などと証言をひるがえすのを防ぐことができるし、裁判に持ち込まれた時も不倫を裏付ける証拠として役立てることができるからだ。
しかし、内容が不正確だったり、パートナーとの間に肉体関係があったことがはっきり書かれていなかったりすると証拠能力が低くなってしまう。そのため「▲年▲月から▲年▲月までの間、〇〇とラブホテルで▲回ほど性交渉を行ったことを認める」といった具合に、「5W1H」が明確にわかる形で記述する必要がある。
慰謝料の詳細
示談書の中でも、特に重要な条項の1つが慰謝料の請求で、金額だけでなく、支払い方法についても詳細に記載しておかなければならない。この項目に盛り込むべき内容は、慰謝料の支払い義務があることを相手が認めた事実、慰謝料の金額、支払期日、支払方法(手渡しか振込かなど)といったものだ。分割で振り込む場合は、「〇〇銀行〇〇支店の口座振込で、第1回支払期日▲年▲月▲日、金額××円、第2回支払期日~」など、なるべく具体的に書くようにする。
なお、金額については、裁判に比べて高めの請求ができるとは言え、「1億円支払え」などといった法外な要求はできないし、相手の支払い能力を超えていれば交渉は成立しないだろう。パートナーと離婚しない場合は50~100万円、離婚する場合は100~200万円程度が相場なので、それも参考にしながら現実的な金額を設定しよう。
求償権の放棄
示談書には、求償権放棄の条項も入れておく必要がある。不倫を行ったことに関しては、パートナーと不倫相手の両方に責任があるので、慰謝料を支払う義務も両者にある。そのため、慰謝料はパートナーにも不倫相手にも請求できるが、離婚しない場合は不倫相手だけに全額請求するケースが多い。
しかし、不倫相手だけから慰謝料を受け取った場合、相手は本来パートナーが支払うはずだった金額の支払いを請求することができる。この権利のことを「求償権」という。相手が後々この求償権を主張する可能性もあるので、それを放棄する旨、示談書に記載しておきたい。
慰謝料以外の誓約事項
示談書には、慰謝料の支払い以外でも、不倫相手に誓約してもらう内容を記載することができる。特に大事なのが、パートナーとの接触の禁止で、不倫関係を解消するとともに、今後一切接触せず、電話、メール、LINEその他いかなる方法でも連絡をとらないことを相手に誓約させなければならない。どちらかに少しでも未練が残っていると、何かのきっかけでまた連絡を取り合うようになり、不倫が再発する恐れもあるからだ。
また、理不尽な恨みを抱いて報復したりしないように、SNSにパートナーが不倫していたことを書き込むなどの名誉棄損行為や、つきまといなどの迷惑行為を禁じる誓約も入れておこう。
誓約に違反した場合のペナルティ
示談書では、示談内容に違反した場合のペナルティも定めておかなければならない。法律では不倫自体を罰することはできないが、パートナーと再び接触した時に違約金の支払いを義務付けることなどを明記しておけば、相手が金銭的ダメージを負うことを恐れて約束を守ろうとする可能性が高くなる。
この条項では、「同意書の第▲条に違反した場合、違約金として金××万円を支払わなければならない」といった文言を記載する。なお、接触禁止の違約金は10万円~30万円程度が相場とされており、あまりに高額な請求は無効になるので、慰謝料とのバランスを考えて金額設定しよう。
清算条項
清算条項とは、今回の示談によって不倫問題が解決したことを示すための条項で、示談書に書かれている内容以外には一切の権利がないということを記載する。この条項を入れておくと、こちらから不倫相手に対する請求内容を変更できなくなるのはもちろん、相手も新たな請求をすることができなくなる。
そのため、後々相手が、「よく考えたらパートナーとの不倫によって自分も被害を受けたので賠償金を請求したい」などと言ってきても、その主張が認められず、紛争の蒸し返しを避けることができる。
示談を行う際の注意点
示談を進めるに当たって、注意しなければならないことがいくつかある。例えば、示談交渉で相手のペースに乗せられると、なかなか合意に至らず、いつまでたっても問題解決ができないという事態になってしまう。かと言って強引な手段を取ると、期待したような成果が得られないばかりか、大きなトラブルに発展することもある。
また、示談が成立したとしても、それですべてが終了したわけではない。相手が示談書の内容を確実に守るとは限らないし、何のかんのと理由をつけて慰謝料の支払いを遅らせるケースもあるからだ。交渉時にやるべきこと、やってはいけないことをお伝えする。
公正証書にしておく方法も
繰り返しになるが、示談書には強制執行の効力はなく、相手が示談書の内容に違反しても差し押さえなどをすることはできない。だが、示談書を公正証書にしておけば、強制執行の効力を持たせることができる。「公正証書」とは、公証人が法律に従って作成する公文書で、裁判の判決と同じ効力がある。
示談書を公正証書化しても、パートナーとの接触の禁止などを法律で強制することはできないが、慰謝料などに関しては効力を発揮し、支払いが滞った時に、裁判をしなくても財産や給与を差し押さえることができる。そのため、分割払いなどで慰謝料の支払いが長期にわたる場合は、公正証書を作成しておけば、万が一の時に役に立つ。
公正証書を作る際は、示談書を公証役場に持参し、示談書の内容に沿って公正証書の原案を作成してもらう。そして、示談をした相手と一緒に公証役場に行き、公証人の前で最終確認をして署名・押印すれば手続きは完了だ。
無理やり署名させない
示談書への署名は、相手が各条項を理解し、納得した上で自主的に行わせるべきで、強要したりしてはならない。例えば、相手が求償権についてよくわかっていないのに、きちんと説明しないまま署名させたり、「黙ってサインしろ」などと詰め寄って署名させたりした場合、後から相手が示談の合意の取り消しを申し立て、示談書が無効になることも十分に考えられる。
慰謝料や違約金についても、おおよその相場があるので、それをはるかに超える法外な金額を請求すれば無効になる可能性が高い。また、接触禁止の条項なども、「再度パートナーに接近したら、会社に知らせ、退職させる」といったペナルティを科すことは許されない。相手の人権を無視するような内容や、公序良俗に反する内容が記載された示談書は、正当なものとは見なされないからだ。
相手を攻撃しない
不倫相手に腹を立てていたり、交渉時の態度が気に食わなかったりしても、相手を攻撃するような言動をしてはならない。相手がこちらの要求を受け入れないからといって、怒りに任せて「不倫したことを会社にばらす」「引っ越ししなければ嫌がらせをする」などと脅せば、相手から脅迫罪で訴えられる可能性があるし、殴る蹴るの他に胸倉をつかんだり、水をかけたりするだけでも暴力と見なされ、最悪の場合、暴行罪で逮捕される恐れもある。
示談交渉の場では、あくまで冷静に事実確認を行い、こちらの要求を正確に伝え、相手が理不尽なことを言ってもとりあえず黙って話を聞くようにしなければならない。もし、冷静に交渉できそうにないのなら、書面でのやり取りや弁護士への委任も検討しよう。
時間稼ぎをさせない
示談交渉を長引かせるのは得策ではない。相手が用心深い性格の場合、示談の内容にすぐには合意せず、時間が経つうちに誰かに入れ知恵をされたり、弁護士に相談したりして交渉を有利に運ぼうとしてくる可能性もある。そうなれば、余分な手間や費用がかかるばかりだ。
あらかじめ電話やメールでこちらの要求を伝えているのにもかかわらず、交渉の場で署名を拒んだり、「もう少し時間がほしい」などと言ってきたりするようなら、「今日中に合意ができないなら裁判を行うことを考えている」、「改めて自宅に内容証明郵便で通知書を送らせてもらう」など、裁判を起こす意思があることを相手に知らせよう。それでも時間が必要と言われた時には、署名を強制することはできないし、相手が帰ろうとするのを無理に引き止めるのもNGだということは頭に入れておきたい。
交渉決裂なら裁判を起こす
相手が示談に応じない時や示談の条件に合意しなかった時は、裁判所に訴状を提出し、訴訟を起こすことになる。訴状には、慰謝料請求の根拠となる不倫の詳細を記載する必要があり、また相手が不倫したことを認めない場合は、不倫の事実を裏づけるための証拠を提出しなければならない。その際、不倫調査で撮影された密会シーンの映像などが、証拠としての効力を発揮してくれだろう。
一方、示談が成立した後、相手が示談書の誓約を守らず、慰謝料や違約金を支払わない場合も、強制執行を行うためには裁判手続きが必要になる。しかし、先ほどお伝えしたように、前もって示談書を公正証書にしておけば、強制執行の申立てをすることで、裁判を行わずに財産の差し押さえなどをすることができるのだ。
まとめ
紛争の当事者同士が話し合って解決を図る示談には、調停や裁判などの方法に比べ、手間や費用を抑えられる、早期に問題解決ができる、慰謝料の増額が見込めるなど、多くのメリットがある。また、示談書をきちんと作っておけば、後々裁判になった時にも役立つし、相手が示談書の内容に違反すれば違約金を支払わせることができる。 ただし、まず不倫の証拠をつかんだ上で示談に臨まなければ、相手が不倫していたことを認めず、交渉に応じない可能性もある。そのため、探偵社などに調査を依頼して、不倫相手の特定をするとともに、不倫の決定的な証拠を手に入れなければならない。また、示談書を作成する際も、記載内容に不備があると望み通りの成果を手にできないし、相手に不当な要求をしたり、無理やりサインさせたりすれば、逆に相手から訴えられることにもなりかねない。 必要な知識を身に着けてしっかり事前準備をし、示談交渉を成功させよう。
監修者プロフィール
伊倉総合法律事務所
代表弁護士 伊倉 吉宣
- 2001年11月
- 司法書士試験合格
- 2002年3月
- 法政大学法学部法律学科卒業
- 2004年4月
- 中央大学法科大学院入学
- 2006年3月
- 中央大学法科大学院卒業
- 2006年9月
- 司法試験合格
- 2007年12月
- 弁護士登録(新60期)
- 2008年1月
- AZX総合法律事務所入所
- 2010年5月
- 平河総合法律事務所
(現カイロス総合法律事務所)
入所
- 2013年2月
- 伊倉総合法律事務所開設
- 2015年12月
- 株式会社Waqoo
社外監査役に就任(現任)
- 2016年12月
- 株式会社サイバーセキュリティクラウド
社外取締役に就任(現任)
- 2020年3月
- 社外取締役を務める株式会社サイバーセキュリティクラウドが東京証券取引所マザーズ市場に新規上場
- 2020年10月
- 株式会社Bsmo
社外監査役に就任(現任)
- 2021年6月
- 社外監査役を務める株式会社Waqooが東京証券取引所マザーズ市場に新規上場
- 2022年4月
- HRクラウド株式会社、
社外監査役に就任(現任)
※2023年11月16日現在
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