その他浮気相手から慰謝料を取りたい!請求の条件と方法は
パートナーが浮気していることがわかった時、パートナーの裏切り行為を非難して謝罪させる、あるいは離婚という形で責任を取らせようと思うのは当然のことだ。しかし、浮気は1人でするものではなく、相手がいるからこそできるもの。パートナーだけでなく、浮気相手にも責任を取らせたいと思う人もいるだろう。そういう人たちの望みをかなえる1つの方法が、浮気相手に慰謝料を請求することだ。 浮気相手からまとまった額の慰謝料を取ることができれば、相手に経済的ダメージを与え、パートナーに2度と近づこうと思わせないようにすることができる。慰謝料を請求できる条件や、請求できる金額、請求する方法についてお伝えする。
慰謝料請求の条件
誰でも1度は「慰謝料」という言葉を耳にしたことがあるはずだ。しかし、実際に慰謝料を請求した経験がある人はあまりいないだろうし、慰謝料がどのようなもので、どういう時に請求できるのか、その内容について詳しく知らない人も多いのではないだろうか。
浮気という許されない行為をした相手から慰謝料を取るのは当然の権利だと思う人もいるかも知れないが、慰謝料の請求権については民法で厳密に定められているため、いつでも請求できるというものではない。また、そもそも「浮気」に対する考え方も、社会一般の解釈と法的な解釈では大きく違う。
慰謝料とはどんなものかを解説するとともに、慰謝料の請求が認められる法的条件について詳しく見ていく。
慰謝料とは?
慰謝料とは、民法の定めにより、他人の不法行為によって精神的苦痛を受けた時に、損害賠償金として支払われるお金のことで、パートナーの浮気によって平穏な夫婦生活が送れなくなり、精神的苦痛を受けた場合も慰謝料を請求することができる。
浮気による法律上の責任は、浮気をした当事者2人にある。2人が共同して不法行為を行い、精神的苦痛を与えたのだから、慰謝料は2人に請求することもできるし、パートナーだけに対しても、浮気相手だけに対しても請求することは可能だ。ただし、離婚しない場合、生計を共にするパートナーから慰謝料を取ってもあまり意味がないし、夫婦関係を悪化させる原因にもなるので、一般的には浮気相手だけに慰謝料を請求することになる。
しかし、浮気をした責任は、パートナーにもあるのだから、浮気相手が自分だけ慰謝料を支払うのを不服として、パートナーにも責任負担分となる慰謝料の支払いを請求する場合もある。このような請求のことを「求償」と言う。実際に求償されるケースは少ないが、法律的には可能であるため、示談の際に求償の意志についても確認した方がいいだろう。
不貞行為があった
これまで「浮気」という表現を使ってきたが、実は法律用語には浮気という言葉はなく、代わりに「不貞行為」という言葉が使われる。不貞行為とは、配偶者のある者が、配偶者以外の異性と自由意思で肉体関係を持つことだ。民法では、「夫婦は互いに貞操を守る義務を負う」とされており、不貞行為を行えば、この貞操義務に違反する不法行為をしたことになり、慰謝料請求の対象となる。
一方、パートナーが配偶者以外の異性とデートしたりキスをしたりしても、それだけでは慰謝料を請求することができない。法律上のボーダーラインは、あくまで相手との間に肉体関係があったどうかであり、プラトニックラブなどは不貞行為には当たらないのだ。逆に、恋愛感情がなくても体の関係があれば、慰謝料の請求が可能だ。
既婚者であることを浮気相手が知っていた
浮気相手と肉体関係があった場合、次に問題になるのが、パートナーが既婚者であることを相手が知っていたかどうかだ。もし、知らなかったのであれば、普通の恋人として付き合っていたことになるので、不貞行為の責任を問うことはできない。
一方、既婚者だと知りながら肉体関係を持った場合は、「平穏な夫婦生活を送る」という妻の権利を「故意」に侵害したことになり、慰謝料の請求が認められる。浮気相手との会話の中で、配偶者がいることをパートナーが伝えていたり、夫婦生活に対する不満などを口にしたりしていれば、当然既婚者だとわかるはずだし、最初は結婚していると知らずに付き合い始めたとしても、後から既婚者だと気づいたにもかかわらず関係を続けていたのだとしたら、故意の浮気と見なされる。
既婚者であることを浮気相手が知ることができた
「故意」ではないが、「過失」によって肉体関係を持った場合も、慰謝料請求の対象となる。「過失」とは、不注意や怠慢によって不法行為をしてしまうことだ。例えば、「左手の薬指に指輪をしている」とか「自宅の住所や電話番号を教えない」といった状態なら、普通に注意を払っていれば、相手が既婚者ではないかと気づくのが自然だろう。
それをうすうす知りながら、結婚しているかどうか確かめることもせず、肉体関係を持てば過失による不貞行為を犯したことになる。慰謝料を請求された際に、相手が「既婚者だとは知らなかった」などと主張してくるケースもあるが、状況的に見て既婚者だと知り得たのであれば、そのような主張は認められない。
夫婦関係が破たんしていると思っていた
夫婦が離婚寸前になっているなど、「夫婦関係が破たんしている」状態になっていると勝手に思い込んで肉体関係を持った場合も、過失による不法行為を行ったと見なされる。浮気をしている既婚者が、相手の気持ちをつなぎとめるために、「パートナーとは別居している」「今、離婚協議をしているところだ」などと嘘をつくのはよくある話だ。
しかし、口では調子のいいことを言いながら、いつまで経っても離婚する気配がないとか、別居しているはずの奥さんが洗濯した服を夫が着ているといった様子があれば、実際は夫婦関係が続いているのではないかと疑ってもおかしくない。それにもかかわらず、事実を確かめることなく浮気を続けると、不法行為の責任を問われることになる。
不貞行為はないが、夫婦関係を破たんさせた
先ほど、「不貞行為が行われていたことが慰謝料請求の条件になる」と書いたが、不貞行為がなくても慰謝料を請求できるケースもある。慰謝料は、被害者が受けた精神的苦痛に対して支払われるものであり、肉体関係の有無にかかわらず、パートナーの浮気によって「平穏な夫婦生活を送る権利」が侵害され、大きな苦しみを味わったのであれば、その責任を問うことも可能だからだ。
そのため、例えプラトニックな関係であっても、パートナーが自分を顧みず、浮気相手と恋人同士のように振る舞い続け、もはや夫婦生活が維持できないほどの精神的ダメージを受けたのだとしたら、その代償を求める権利がある。実際に、最近では肉体関係がないケースでも慰謝料請求が認められる事例も増えている。
慰謝料が請求できないケース
パートナーが結婚していることを浮気相手が知っていながら不貞行為を行った場合や、不貞行為はなくても浮気によって夫婦関係を破たんさせた場合は、慰謝料を支払わせられることがわかった。では、既婚者と知った上での浮気は、すべて慰謝料請求の対象になるのだろうか?
実は、その条件に当てはまっていても、慰謝料が取れない場合があるし、手続き上の問題があって裁判所が請求を認めてくれない場合もある。慰謝料が請求できないケースをピックアップしよう。
パートナーと婚姻関係がない
民法では、「夫婦は互いに貞操を守る義務を負う」という「貞操義務」を定めており、婚姻関係にある者が、その義務に反して配偶者以外の異性と肉体関係を持った場合、不貞行為を働いたことになり、慰謝料請求の対象となる。逆に言えば、婚姻関係にない者には貞操義務もないため、パートナーが自分以外の異性と肉体関係を持っても不貞行為にはならず、慰謝料の請求ができない。
ただし、正式に結婚していなくても、内縁関係(事実婚)であれば、夫婦としての実態があると見なされるため、貞操義務が生じる。また、婚約しているカップルも、婚姻関係を結ぶことを約束した間柄なので貞操義務が発生し、慰謝料の請求が可能になる。
既婚者であることを浮気相手が知らなかった
先ほど解説したように、パートナーが既婚者だと知りながら浮気相手が肉体関係を持った場合(故意)や、既婚者だと知り得たにもかかわらずその事実を確かめなかった場合(過失)は、浮気相手に対して慰謝料を請求することができる。
反対に、パートナーが既婚者であることを知らず、また知る機会もなかった時には慰謝料の請求はできない。例えば、パートナーが自分は独身だと嘘をつき、結婚指輪を外すなど既婚者であることを悟られないような細工をしていたのであれば、その嘘を見抜ける状況ではなかったと判断される。また、出会い系サイトやSNSで知り合い、パートナーの素性がわからないまま肉体関係を持った場合も、浮気相手に責任を問うことはできない。
自由意思による浮気ではなかった
相手が自分の意思で浮気したのではない場合は、慰謝料を請求できない可能性がある。例えば、パートナーが浮気相手の上司だったり、会社の得意先の担当者だったとして、パートナーが自分の優位な立場を利用して無理やり肉体関係を持ったのであれば、責めを負わなければならないのはパートナーの方だ。
さらに極端な例として、パートナーが相手をレイプしたり、相手の弱みを握って脅したりするなどして肉体関係を強要したのなら、慰謝料請求どころか逆に加害者として強姦罪に問われることになる。
夫婦関係がすでに破たんしていた
浮気が始まる前から、パートナーと別居していたり、別れ話を進めていたなど、夫婦関係が破たん状態にあった時も、慰謝料請求が認められないことがある。このような場合は、「平穏な夫婦生活を送る権利」がすでに失われていると考えられるので、パートナーの浮気によってその権利が侵害されたことにはならないからだ。
また、浮気が始まる前からパートナーとの性交渉を拒否し、セックスレスの状態が続いていた場合も、夫婦関係が破たんしていたと見なされ、慰謝料請求ができないケースがある。ただし、5年~10年という長期にわたるセックスレスでないと、夫婦関係の破たんには該当しないことが多い。
すでに十分な慰謝料を受け取っている
浮気が発覚した後、パートナーに謝罪させ、罰として慰謝料を払わせていたような場合は、浮気相手に慰謝料を請求できないこともある。浮気に関する慰謝料については、当事者両方に責任があるため、請求された慰謝料を連帯して支払うことになっている。
通常は、その慰謝料をパートナーと浮気相手が半分ずつ負担する形になるが、どちらか一方が全額を負担しても構わない。そのため、請求できる慰謝料が100万円だとして、パートナーからすでに100万円受け取ってしまっているのであれば、それ以上浮気相手から慰謝料を取ることはできないのだ。
自分も浮気している
パートナーが浮気しているのと同時に自分も浮気していた、つまりダブル不倫をしていたような場合は、パートナーや浮気相手に対して慰謝料の請求権を主張することはできない。繰り返しになるが、慰謝料は「平穏な夫婦生活を送る権利」を侵害され、精神的苦痛を受けた賠償として支払われるが、ダブル不倫をしていたとなれば、平穏な夫婦生活はすでに失われていたと考えるのが妥当な話だ。
なお、このような場合、慰謝料を請求するどころか、自分が浮気をしていた相手の配偶者から慰謝料を請求される可能性もあるので要注意だ。
時効が成立している
他の損害賠償と同様に、慰謝料の請求にも「時効」があり、一定期間のうちに請求しないと権利が消滅してしまう。浮気の慰謝料の時効は、浮気相手が誰かがわかっている場合は、浮気が発覚した日から3年、誰かわからない場合は、浮気相手が判明してから3年と定められている。従って、浮気の事実がわかっても、浮気相手が不明なうちは、時効がカウントされることはない。
ただし、浮気の慰謝料にはもう1つの時効があり、浮気が行われてから20年経過すると、慰謝料の請求権が消滅する。つまり、パートナーが浮気をしてから20年後にその事実に気づいても、後の祭りなのだ。そうならないためにも、浮気の事実を早くつかみ、慰謝料請求の準備を進める必要がある。
証拠がない
これまで慰謝料の請求条件について解説してきたが、例え請求可能な条件が満たされていたとしても、請求権を行使するためには、「浮気の事実を裏づける証拠」をつかまなければならない。パートナーが浮気していることに気づいても、証拠もなしに問い詰めれば、パートナーも浮気相手も素直にその事実を認めないだろうし、慰謝料を請求しても拒否される可能性が高い。
そうなると、裁判所に調停を求めたり、訴訟を起こすことも考えなければならないが、その際にも、浮気を立証する法的に有効な証拠が揃っていないと慰謝料の請求が認められない、もしくは支払われる慰謝料が減額される恐れがある。浮気を立証する責任は、慰謝料請求を行う側にあるため、事前に浮気の証拠を手に入れることが重要なカギとなるのだ。
慰謝料の金額
慰謝料請求の条件や方法については、民法で細かく定められているが、請求金額に関しては一律でいくらと決まっているわけではない。慰謝料は、加害者から受けた精神的苦痛に対して支払われる損害賠償であるため、その精神的苦痛の大きさによって金額も変わってくるからだ。
とは言え、浮気相手にダメージを与えるために法外な金額を請求しても裁判で認められることはないし、過去の判例などを参考に、このようなケースではいくらぐらいと、おおよその基準もできている。その基準を理解しておけば、慰謝料請求の手続きをスムーズに進めることができるだろう。
一般的な慰謝料の相場や、慰謝料が増額されるケース・減額されるケースについて解説する。
慰謝料の相場
浮気の慰謝料の一般的な相場は、50万円~300万円と言われる。相場と言いながら、金額にこれだけ幅があるのは、浮気の状況などさまざまな事情が考慮されるからだ。まず、金額に大きく関わってくるのが、浮気が原因で夫婦が離婚に至ったかどうかという点だ。
離婚を選択したということは、浮気がこれ以上パートナーとの生活を続けられないほどの精神的ダメージを与え、夫婦関係を破たんさせたということになる。そのため、請求できる慰謝料の金額も200万円以上と、最も高額になるケースが多い。また、離婚には至らなかったが、パートナーと別居することになった場合は、100万円~200万円が相場になる。これは、先々離婚する可能性も見越した金額と言えるだろう。
一方、離婚しない、夫婦関係は継続という場合でも、50万円~100万円程度の請求が認められる可能性が高い。夫婦関係が破たんすることは避けられたものの、浮気によって平穏な夫婦生活が壊され、精神的苦痛を味わったことは間違いないからだ。慰謝料計算は、離婚に至る背景による。
慰謝料が高額になるケース
離婚・別居以外にも、高額な慰謝料が認められるケースはいろいろある。その1つが、夫婦の関係や家庭の状況だ。結婚生活が長いほど、夫婦の信頼が裏切られた時の精神的苦痛が大きく、離婚後の再スタートも困難になる。さらに、夫婦の間に子供がいる場合は、家庭生活の崩壊による影響が大きいため、慰謝料の請求額が高くなる傾向がある。
浮気の状況や当事者の態度も、慰謝料の金額を左右する。浮気の期間が何年にもわたり、その間頻繁に不貞行為を行っていたのであれば、夫婦の貞操義務を放棄しているのと同じことだ。また、1度浮気が発覚し、関係の解消を約束したにもかかわらず再び関係を持った場合や、浮気をしていることが明らかなのに否認を続けているような場合は、悪質と判断される。パートナーと浮気相手との間に子供ができていた時も、極めて大きなショックをもたらすため、慰謝料が増額される可能性が高い。
中には、精神的ダメージの大きさが目に見える形で表れるケースもあり、浮気によってうつ病などを発症してしまった場合は、高額な請求が認められる。これらの増額要素が組み合わさった結果、慰謝料が300万円を超える場合もあるのだ。
慰謝料が低くなるケース
一方、慰謝料が低額になりやすいケースとしては、浮気が発覚する前からパートナーと別居していたなど、夫婦関係が破たん寸前だった場合や、結婚期間が3年以下といった短い期間だった場合などがある。浮気の状況や当事者の態度については、1~3か月程度の期間で浮気が終わったケースや、1度だけ関係を持ったがすぐに相手と別れ、浮気が発覚した際も自分の非を素直に認めて謝罪したようなケースでは、慰謝料が減額されることが考えられる。
逆に、過去に自分も浮気していたなど、パートナーの浮気のきっかけが自身にあった場合も、慰謝料が低額になる可能性がある。
慰謝料を請求する方法
浮気相手が慰謝料の支払いにあっさり応じることもあるだろうが、浮気の事実を認めなかったり、支払いを拒否した場合は、法的手段に訴えなければならない。そういうケースを想定して、事前に法律の知識を頭に入れ、裁判になっても対応できるように準備をしておかないと、慰謝料の請求を認めてもらえなかったり、要望通りの金額が受け取れなかったりする恐れも出てくる。
さらに、相手に慰謝料を支払わせようとして強引なやり方をすると、自分が不利な立場になるばかりか、大きなトラブルを招くことにもなりかねない。確実に相手に慰謝料を支払わせるための段取りや、やってはいけないNG行為を紹介する。慰謝料請求方法に精通して、失敗ではなく成功を手にしたい。
浮気調査をする
前にもお伝えしたように、慰謝料を請求するためには、浮気の事実を裏づける証拠が必要で、証拠を集めて浮気を立証する責任は、慰謝料を請求する側にある。また、証拠がないままパートナーや浮気相手を問い詰めても、言い逃れしようとするかも知れないし、尻尾をつかませないために一時的に関係を解消するなどの策を講じる恐れもある。そのようなリスクを回避するためには、浮気に気づいてもそれを口にせず、密かに証拠集めを進めなければならない。
浮気を立証する有力な証拠となるのは、パートナーと浮気相手がラブホテルに出入りしている場面を撮影した写真や動画などだ。しかし、確実に慰謝料を取るには、繰り返し肉体関係を持っていたことを証明しなければならない。相手に気づかれることなく、2人の密会シーンを何度も撮影するのは、一般の人には難しいため、探偵社や興信所など、調査のプロを使って証拠集めをした方がいいだろう。
浮気相手を特定する
浮気相手に慰謝料を請求する場合は、パートナーとの密会現場を押さえるだけでなく、相手の氏名や住所なども突き止めなければならない。相手を特定することができなければ、慰謝料の交渉を行うことも裁判の手続きを進めることもできないからだ。
浮気相手の情報を知るには、浮気をしていたパートナーから聞き出すのが一番手っ取り早いが、浮気相手に迷惑をかけたくないという理由から、パートナーが口を開かないこともある。そうなると、改めて浮気相手のことを調べるのは手間のかかる作業になるので、調査をする際に浮気の証拠だけでなく、浮気相手の身元も調べてもらうよう探偵に頼んでおこう。
内容証明郵便を送る
浮気相手から慰謝料を取る方法として最初に思いつくのが、話し合いによる交渉だろう。しかし、相手といきなり会って交渉するのはハードルが高いかもしれないので、まずは内容証明郵便を送り、慰謝料請求の意志を伝えてから交渉に入ろう。
「内容証明」とは、いつ、誰に、どんな内容の書面を送ったのかを、郵便局が証明してくれる一般書留だ。通常の郵便で慰謝料請求の手紙を郵送すると、送付履歴が残らないため、「手紙を受け取っていない」とシラを切られる恐れがある。一方、内容証明郵便を使えば、慰謝料を請求したという証拠が残るし、相手が内容証明を無視した場合、「悪質」と見なされ、裁判などで不利な立場になる。
内容証明には、浮気によって受けた精神的苦痛、慰謝料の要求、パートナーとの関係解消の要求、要求に応じない場合に取る法的措置などを記載する。内容証明郵便を受け取った相手が、裁判に訴えられるかもしれないと知ってショックを受け、慌てて要求に応じるケースも多いのだ。
交渉する
浮気相手と対面で交渉する際には、相手が浮気の事実を認めない可能性もあるので、証拠を持参して言い逃れができないようにしよう。交渉を進めるうちに、感情的になる場面があるかも知れないが、怒りに任せて相手を非難し続けたりすると、口論になって交渉がまとまらなくなる恐れがあるので、あくまで冷静に事実だけを述べて交渉するようにしたい。
どうしても冷静でいられそうにないという人や交渉に自信がないという人は、弁護士に立ち会ってもらったり、代理で交渉してもらうのもいいだろう。なお、交渉時にICレコーダーなどを用意して浮気相手との会話を録音しておけば、裁判になった時にそれを証拠として使うこともできる。
示談書を作成する
交渉によって、浮気相手と合意ができたら、「示談書」を作成しよう。示談書とは、交渉で双方が合意した内容を文書化した書類だ。示談書があれば、相手も後になって「合意はしていない」などと言い逃れをすることができなくなる。
なお、作成した示談書は、公証役場で「公正証書」にしてもらう方がいいだろう。公正証書とは、公証役場の公証人によって作成される公文書で、高い証拠能力を持つ。さらに、合意した内容を守らない時は強制執行されても異議を唱えないという「強制執行認諾文言」の付いた公正証書にしておくと、相手の給料や預貯金などを差し押さえて慰謝料を回収することができる。示談書の書き方は弁護士などに聞いても良いし、ネットのテンプレートをベースに自分で書いてもかまわない。
調停・裁判
相手が交渉に応じない場合や、交渉をしても意見が合わない場合には、「調停」や「裁判」によって慰謝料を請求することになる。調停は、裁判所の調停委員に間に入ってもらって、話し合いで合意を目指す方法だが、浮気相手に慰謝料を請求する場合は、裁判を選択するのが一般的だ。
裁判では、まず原告側が自分の言い分を記載した訴状を提出し、その後法廷で主張や立証を行う。しかし、一般の個人がこれらのことを行うのは難しいので、通常は弁護士を代理人に立てる。その際、浮気調査で集めた証拠を提出すれば、裁判を有利に運ぶことができるだろう。
裁判官は、原告・被告双方の主張を吟味し、慰謝料請求の可否や金額などについて判決を下すが、裁判がある程度進んだ段階で和解を勧めるケースも多く、和解が成立すれば、その時点で訴訟が終了する。
なお弁護士を利用する場合は、弁護士費用は事前に確認しておきたい。
違法な手段を取らない
浮気相手を懲らしめたいという気持ちはわかるが、法にのっとって行動しないとさまざまなトラブルを招く。内容証明に誹謗中傷や脅迫めいたことを書いてはいけないし、それを相手の職場に送り付けたりすれば名誉毀損罪や侮辱罪になる恐れがある。また、示談交渉時に、「慰謝料を払わなければ痛い目にあわせる」などと相手を脅せば脅迫罪になるし、水をかけたりしただけでも暴行罪に問われかねない。
浮気の証拠集めについても、違法な手段を使うと、裁判で証拠として認められないだけでなく、逆に相手から訴えられる可能性もある。盗撮や盗聴自体は違法ではないが、浮気相手の敷地に勝手に侵入してカメラや盗聴器を設置するのは違法行為だ。また、IDとパスワードを盗んで、パートナーや浮気相手のSNSなどにログインすると不正アクセス禁止法に抵触するし、本人の承諾なくGPSをカバンや服に取り付けるとプライバシーの侵害と見なされる。合法・違法の線引きは難しいので、浮気の証拠集めは、調査のプロに任せた方が無難だろう。
まとめ
パートナーの浮気を知った時、深く傷つき、パートナーを罰するだけでなく、浮気相手からも慰謝料を取って償いをさせたいと思うのは、自然な感情だろう。また、慰謝料の請求は、金銭的なダメージを与えるだけでなく、浮気相手を2度とパートナーに近づかせないための抑止力にもなる。 しかし、慰謝料を請求するためには、パートナーが既婚者であることを知った上で肉体関係を持ったかどうかなど、いくつかの法的条件を満たさなければならない。さらに、請求できる慰謝料の額は一律ではなく、浮気によって受けた精神的苦痛の大きさによって決まるので、パートナーが浮気をしていた期間の長さや、浮気した頻度も重要になる。 従って、納得のいく金額の慰謝料をもらうためには、浮気相手の氏名・住所を特定し、肉体関係の有無、どれぐらいの期間・頻度で浮気していたのかといった事実を明らかにすることが必要だ。浮気調査のプロの手も借りて、密会現場をきっちり押さえ、慰謝料を勝ち取ろう。
監修者プロフィール
伊倉総合法律事務所
代表弁護士 伊倉 吉宣
- 2001年11月
- 司法書士試験合格
- 2002年3月
- 法政大学法学部法律学科卒業
- 2004年4月
- 中央大学法科大学院入学
- 2006年3月
- 中央大学法科大学院卒業
- 2006年9月
- 司法試験合格
- 2007年12月
- 弁護士登録(新60期)
- 2008年1月
- AZX総合法律事務所入所
- 2010年5月
- 平河総合法律事務所
(現カイロス総合法律事務所)
入所
- 2013年2月
- 伊倉総合法律事務所開設
- 2015年12月
- 株式会社Waqoo
社外監査役に就任(現任)
- 2016年12月
- 株式会社サイバーセキュリティクラウド
社外取締役に就任(現任)
- 2020年3月
- 社外取締役を務める株式会社サイバーセキュリティクラウドが東京証券取引所マザーズ市場に新規上場
- 2020年10月
- 株式会社Bsmo
社外監査役に就任(現任)
- 2021年6月
- 社外監査役を務める株式会社Waqooが東京証券取引所マザーズ市場に新規上場
- 2022年4月
- HRクラウド株式会社、
社外監査役に就任(現任)
※2023年11月16日現在
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