その他夫婦はなぜ別れるのか? 令和の離婚原因ランキング
厚生労働省の統計によると、2019年~2020年の1年間の離婚件数は19万9,024件に上り、人口千人に対する離婚率は1.57と報告されている。この数字には、夫婦の話し合いで離婚が成立したケースが含まれているが、中には話が上手くまとまらなかったケースもある。そこで、家庭裁判所に仲介をしてもらうための離婚調停などの申し立てが行われた件数を見てみると、2019年度の実数は58,969件。つまり、離婚件数の約30%の割合で、話し合いでは決着がつかず、裁判所に持ち込まれていると考えられるのだ。ちなみに政府統計によれば年代別では30代、40代の離婚が多い。 もちろん愛し合って結婚したのだから、円満な夫婦生活が続くのに越したことはない。しかし、思わぬきっかけで夫婦仲に亀裂が入らないとも限らないので、万が一のための備えはしておくべきだろう。離婚に至った原因のランキングや、離婚する可能性の高い夫婦の特徴をピックアップするとともに、離婚することになった場合の段取りや、事前にやっておくべきことなどを紹介する。
2020(令和2)年度・離婚原因ランキング
離婚に関し、2020年度に家庭裁判所に対して申し立てのあった58,969件のうち、夫からの申し立ては15,500件、妻からの申し立ては43,469件だった。その申し立ての動機について、夫・妻が訴える離婚の原因ランキングを見ていこう。
まずは、夫からの離婚申し立て理由ベスト10から。
1位 性格が合わない(31.6%)位 精神的に虐待する(10.8%)
3位 異性関係(7.2%)
4位家族親族と折り合いが悪い(6.7%)5位 浪費する(6.4%)6位 性的不調和(6.0%)7位 暴力を振るう(5.0%)
8位 同居に応じない(4.6%)9位 家族を捨てて顧みない(2.6%)10位 生活費を渡さない(2.3%)
続いて、妻からの申し立てベスト10。
1位 性格が合わない(55.7%)
2位 生活費を渡さない(45.2%)
3位 精神的に虐待する(37.4%)
4位 暴力を振るう(29.3%)5位 異性関係(22.2%)6位 浪費する(13.7%)7位 家族を捨てて顧みない(10.3%)
8位 性的不調和(9.6%)9位 家族親族と折り合いが悪い(9.0%)10位 酒を飲みすぎる(8.9%)
両者のランキングを見てみると、どちらも「性格が合わない」が圧倒的に多い。また、「精神的に虐待する」「暴力を振るう」などのDV・モラハラ問題や、「異性関係」、つまり浮気問題も上位に入っている。では、それぞれの原因を、妻・夫の視点を交えながら具体的に見ていこう。
性格が合わない(性格の不一致)
夫・妻ともに、離婚の申し立て理由のトップに挙げられているのが「性格が合わない」、すなわち性格の不一致だ。そもそも人は皆、生まれも育ちも違うわけだから、性格が違うのは当然だが、恋愛期間や結婚当初は自分とは違う部分も含めて相手に魅力を感じていることも多いだろう。しかし、結婚生活が長くなるとともに、相手の性格や行動パターンの嫌なところばかりが目に付くようになると、一緒に生活するのが我慢できなくなってくる人もいる。統計には出てこないが、いびきがどうにも我慢ならず、やがて他のことまで気に入らなくなったという話も聞く。
また、結婚生活が始まれば、夫婦で話し合って決めなければならないこともたくさん出てくる。住まいの問題一つにしても、どこに住むかに始まり、賃貸にするか、家を購入するか、ローンはどうするかなどによって、家計の在り方まで変わってくる。さらに、家事の分担や子供の教育方針についても夫婦の意見がぶつかることも少なくないはずだ。こうした考え方や価値観の相違が、次第に夫婦の距離を遠ざけるようになり、気持ちのすれ違いが極限まで行ってしまうと、離婚に発展することになる。
暴力を振るう(DV)
妻からの離婚申し立て理由の上位に入っているのが「暴力を振るう」=DVだ。DVは今に始まったことではないが、昔は家父長制の影響も強く、妻が夫に従うのは当然と考えられていたり、極度に世間体を気にしたりする風潮があったために、夫から暴力を受けても泣き寝入りすることが多かった。しかし、2002年に「配偶者からの暴力の防止および被害者の保護に関する法律」、通称「DV法」が成立して以降、家庭内暴力は犯罪だという認識が広まってきた。その結果、暴力を振るう夫に対して離婚を考える妻が増えるようになったのだ。
日常的に暴行が行われている家庭は、常に高い緊張状態にあり、落ち着いた生活を送ることができないばかりか、被害者が肉体的・精神的に深い傷を負うこともある。また、子供がいる家庭では、子供の精神にも悪影響が出ることは間違いない。なお、最近では、逆に妻が夫に暴力を振るうケースも増加しており、夫の離婚理由ランキングの7位にも入っている。気の弱い男性・立場の弱い男性が増えているのかも知れない。
精神的虐待(モラハラ)
精神的虐待とは、精神的な嫌がらせのことで「モラルハラスメント」とも呼ばれる。モラハラはDVの一形態であり、夫からの離婚理由の第2位、妻からの離婚理由の第3位に入っている。モラハラには、「誰のおかげで生活できてるんだ」「甲斐性なし」「何をやらせてもダメな奴だ」などと相手をこき下ろしたり、大切にしているものを壊したり、理由もなく無視し続ける、人前で笑い者にする、ミスするたびに大きなため息をつくといった行為も該当する。
こうした行為によって受けた心の傷は、目には見えないため、周囲に理解してもらえないことも多い。また、モラハラの加害者には、自分の考えを一方的に押し付け、相手の言葉には一切耳を貸そうとしない傾向があるため、被害者側は「自分は価値のない人間だ」などと精神的に追い詰められ、無気力状態や抑うつ状態になる恐れがある。そして、そのような生活に耐えかねて、離婚を考えるようになるのだ。モラハラで精神状態が悪化した場合、うつ病などになるリスクもあるため、専門家に相談することも必要だ。
異性関係(浮気・不倫)
浮気・不倫などの異性関係の問題が、夫からの離婚理由の第3位、妻からの離婚理由の第5位にランキングされている。昔は、浮気と言えば夫がするものと思われていたが、女性の社会進出に伴って、妻の浮気も増えているようだ。浮気は、パートナーに対する背信行為であり、信頼していたパートナーが浮気していたことを知って大きなショックを受け、夫婦関係を維持できなくなってしまうケースも多い。
浮気相手との関係が短期間のうちに発覚して解消されたケースや、1回限りの出来心だったりしたケースでは、夫婦の関係が修復される可能性もあるが、浮気が長く続いていたり、2度3度と繰り返される場合は、我慢の限界を超えて離婚を選択する人も多いだろう。もちろん、1回限りでも自分を裏切ったパートナーを許すことがでないという人もいるし、逆に浮気相手に本気になってしまったパートナーの方から別れ話を切り出してくることもある。いずれにしても、浮気に関しては早期に察知し、対処しなければならない。
浪費癖
浪費癖も、夫・妻ともに離婚理由の上位に挙がっている。もともと夫婦の価値観は同じではないから、それぞれ異なる趣味や嗜好を楽しむのは悪いことではないが、そこにお金が絡むと揉め事になるケースも少なくない。男性の場合の浪費は、パチンコや競馬などのギャンブルにお金をつぎ込み、女性の場合は高級ブランドなどの買い物に散財する傾向があるようだ。それが、「金遣いが荒い」という表現で済むうちはまだいいが、家計の範囲に収まらず、パートナーが知らないうちに貯金を使い込むようになったりすれば、離婚の危機が訪れる。
特に、パートナーがギャンブル依存症や買い物依存症だったりすると、いくら言い聞かせても浪費がやまず、やがて借金を重ねることになるかも知れない。気が付いた時には自己破産しかないという状況になっている危険性もあるので、医療機関などに相談し治療を受けさせなければならない。
生活費を渡さない
妻からの離婚理由の第2位に入っているのが、夫が生活費を渡さないという問題だ。夫婦関係の基本は、生活費を分担し、お互いに協力して生活を営むことだ。しかし、主な収入源が夫の給料で、妻がパートなどを細々とやっているような場合、夫が家に生活費を入れなくなると家計が成り立たなくなる。実際に、夫が給料の中から毎月決まった額を渡していたのが、突然お金を一銭も渡さなくなるというケースがあるのだ。妻が買い物依存症で、お金を渡すとすぐ使ってしまうというなら話は別だが、夫が給料を自分のやりたいことだけに使って、あとは妻任せというのでは無責任すぎるだろう。夫に何度頼んでも聞き入れず、幼い子供を抱えてパートを増やすこともままならない。生活がどんどん苦しくなり、困り果てた挙句、離婚を決意するという事態になってしまう。
家族親族との折り合いが悪い
パートナーの家族や親族との折り合いが悪いという問題は、夫からの離婚理由の第4位にランクされている。夫婦の間でさえ、性格や価値観の違いから喧嘩になることがあるのだから、その家族や親族が相手となれば、付き合いが上手くいかないケースが出てくるのも当然だろう。特に昔から、嫁と姑の関係が問題になることは多い。それぞれに家事や育児の流儀があるため、相手のやり方が気に入らない時があるのだ。そういう時、夫が上手く仲裁に入れば丸く収まるが、一方的に姑の肩を持ったりすると夫婦関係がこじれていく。さらに、親と同居することになったりすると、嫁・姑の確執がますます激しくなり、どちらか一方が家から追い出されることにもなりかねない。また、妻も、自分が大事に思っている親兄弟を夫がないがしろにするようだと、期待を裏切られたと感じ、離婚を考えてしまうこともあるだろう。
家庭を捨てて顧みない
共働きが当たり前になってきている現在、家事・育児をどうするかは重要な問題だ。専業主婦でさえ、家事と育児の両方を1人で担うのは大変なのだから、共働きの場合は、夫婦で話し合って分担するしかない。しかし、実際には、夫に比べて妻の分担が多くなる傾向があり、それでなくとも妻のストレスは溜まりがちだ。さらに、夫が昔ながらの会社人間で、残業や飲み会ばかりに明け暮れて、妻の悩みも聞いてくれないようであれば、いつか不満が爆発するのは避けられない。また、中には、暇ができると外で飲み歩いたり、趣味に没頭したりして、ろくに家族サービスもしない道楽者もいる。一方では、妻が遊び歩いたり、酒浸りになったりして家事・育児を放棄するというケースもあり、これも離婚を選ぶ動機になるだろう。
性的不調和
離婚理由として夫の6位、妻の8位に入っている性的不調和も、深刻な問題に発展する可能性がある。性的不調和とは、セックスレスや性的嗜好の不一致などだ。セックスレスは、法律に反するわけではないが、結婚してから一度も性交渉がなかったために離婚になり、慰謝料の支払いを命じられた事例もある。性交渉については夫婦ごとに違いもあるため、お互い合意の上でセックスレスになっているのであれば問題ない。しかし、一方にはその欲求があるのに、もう一方が特別な事情もなくそれを拒み続けている場合は、夫婦関係が破たんする原因にもなる。自分が求めても、いつも拒否されていると、ストレスが高まるだけでなく、「自分が愛されていないのではないか」と感じるようになり、別の異性を求めるようになる危険性もあるのだ。また、SM行為など、特殊な性的嗜好をパートナーに強要するのもNGで、離婚原因になったり、DVで訴えられることもある。
離婚しやすい夫婦の特徴
さまざまな離婚原因があることがわかったが、これらの原因がある日突然現れるわけではない。その根本には、それぞれの心の奥に潜む問題や、日頃の夫婦関係・家庭環境が影響しているケースも多いのだ。離婚しやすい夫婦の特徴をピックアップする。
コミュニケーション不足
離婚する夫婦に一番よく見られるのが、コミュニケーション不足だ。結婚すればさまざまな悩みやトラブルも起きるものだが、夫婦で話し合う機会がないと、次第に不満が蓄積し、いつか爆発することになる。しかし、夫は、「言葉にしなくても伝わるはず」と、黙っていても妻が自分の気持ちを汲み取ってくれると思い込む。一方、妻は、夫に聞いてほしいことがあるのに、仕事で疲れている様子を見てあきらめ、1人で悩みを抱え込むようになる。そういう状態が続くと、夫婦の気持ちはどんどんすれ違っていってしまう。言葉にしなければ、想いは伝わらないものと考え、夫婦の間でわだかまりを感じたらすぐに口にした方がいいし、日頃から身近に起きた出来事や自分が感じたことなど、些細なことでも話す習慣をつけておけば、すれ違いも避けられるはずだ。
相手を尊敬していない
結婚すれば、誰でも理想の夫婦のイメージを思い描くだろうし、パートナーに「こういう夫・妻であってほしい」と期待するところもあるだろう。しかし、パートナーにも自分の考えがあるし、努力しても理想に近づけない時もある。それなのに、自分の期待に応えてくれないからと、相手を馬鹿にしたり、愛想をつかしたりするようだと、夫婦関係は冷え込んでいく。また、結婚生活が長くなると、パートナーが自分や家族のために頑張ってやってくれていることを、当然のことのように感じ、感謝の言葉も口にしなくなる時もある。たとえ心の中では感謝していても、言葉にしなければ伝わらないし、パートナーも自分の努力を虚しく感じてしまうかも知れない。特に、30代や40代になると、お互いに人物としての存在を感じるようになり、そこには尊敬できる側面を期待することもある。自分の理想や要望を一方的に押し付けるのは止めて、まずは相手の意志や気持ちを尊重し、小さなことでも自分のために何かしてくれたら「ありがとう」と口に出して言おう。
トラウマを抱えている
DV加害者は、被害者にいつもひどい態度を取るわけではなく、反省したり、気遣ったりする時もある。そうした態度のギャップから、被害者が加害者を受け入れてしまうというケースも少なくない。しかし、DVが自然に収まることはほとんどなく、「俺が悪かった」「もう絶対にしない」と反省しても、ストレスが溜まれば、またDVが繰り返される。その原因の一つに、幼少期に加害者自身がDV被害者だったことが挙げられる。自分や母親が暴力を受けている環境で育った子供は、大人になってから父親と同じ手段で女性を従わせようする傾向が高いというデータもある。一方、DV被害者にも、幼い頃に親や兄弟などから暴力を受け続けて自尊心や自立性を奪われてしまったという人がいる。DVがエスカレートすると取り返しのつかないことになる危険性があるので、早期にカウンセリングなどを受けることが必要だ。
夫婦の格差
収入や資産、社会的地位、学歴など、社会にはさまざまな格差が存在する。当然、夫婦の間にも、格差はあるわけだが、その隔たりが大きく、かつそれに対して優越感や劣等感を抱いていると夫婦関係が上手くいかなくなることがある。例えば、収入においては、いまだに男女差が大きく、正社員同士でも男性より女性の給与が大幅に少ないことも珍しくない。それにもかかわらず、夫が「共働きなのだから、自分の稼ぎは一切渡さない」などという態度を取れば、妻の不満も高まるだろう。また、逆に妻の方が高収入だったり、夫が無職で働かないといった夫婦も離婚に結びつきやすい。収入や社会的地位、学歴が高ければ、いい夫・いい妻というわけでもないのだから、格差を意識せず、人間としての相手や自分の長所を重視して夫婦関係を築いていくことが大切だ。
親離れしていない
親と仲がいいのは悪いことではないが、パートナーや子供より、親のことを優先するようであれば問題だ。例えば、「マザコン」の夫は、家の購入や子供の教育方針など、本来夫婦で話し合わなければならないことを、母親に相談して決めてもらったりする。また、嫁姑が対立すれば、問答無用で母親の肩を持ち、ことあるごとに妻と母親を比較する。これでは夫婦関係が上手くいくはずがない。夫がマザコンになる原因には、母親が過保護で子供に自立の機会が与えられなかったり、逆に子供の頃に母親にかまってもらえず愛情に飢えているといったことが考えられる。この問題を解決するには、夫や母親にマザコンになっていることを自覚させることが必要だが、すぐには難しいという場合は、とりあえず嫁姑の関係を良好にすることから始めるしかないかも知れない。
離婚する方法
お互いに夫婦関係を維持しようと努力しても上手くいかず、離婚に至ってしまうケースもある。そんな時、どんな方法・手順で離婚するのか、よくわからないという人も少なくないだろう。どんなケースでどういう離婚方法を選べばいいのか、あらかじめ基本的な知識を身につけておいて損はない。日本法で定められている4つの離婚方法を紹介する。
協議離婚
日本では、大きく分けて「協議離婚」「調停離婚」「審判離婚」「裁判離婚」という4つの離婚方法がある。このうち、最もポピュラーなのが協議離婚だ。協議離婚は、夫婦が話し合いをして離婚に合意するもので、子どもの親権さえ決めておけば、離婚届けを作成して役所に提出するだけで離婚が成立する。しかし、実際には、慰謝料や養育費、財産分与など、夫婦で話し合うべき項目は少なくない。感情に任せて、熟慮せずに取り決めをしてしまうと、後々トラブルになる可能性もあるので注意しなければならない。
調停離婚
夫婦の話し合いがまとまらず、合意に至らなかった場合、次の段階として離婚調停に進むことになる。この方法では、家庭裁判所の調停委員を仲介役として、慰謝料や親権、養育費、財産分与などの条件を含めて話し合いで離婚成立を目指す。離婚調停に当たっては、家庭裁判所に調停申立書と戸籍謄本を提出して、申し立てを行う。また、離婚の経緯を記した陳述書を添えることもある。調停委員は夫婦双方の意見を基にして公正な判断を下し、話がまとまるように仲介する。調停離婚のメリットの一つは、話し合いの際に夫婦が顔を合わせなくてもよいことで、お互い感情的になるのを避けることができる。
審判離婚
調停が成立しそうであるにも関わらず、何らかの事情があって決裂しそうな時に、裁判官が離婚を決定するのが審判離婚だ。この方法が利用されるのは、調停で夫婦の意見がほとんど一致しているのに、わずかな食い違いで完全に合意できない場合や、当事者が外国人で本国に帰ってしまい、調停を成立させられない場合などのレアケースだ。通常、夫婦の意見の食い違いが起きるのは、財産分与や慰謝料、親権などの重要な部分であり、そこが合意できていなければ審判離婚はできないため、裁判離婚が選択されることになる。
裁判離婚
離婚するための最終手段が、裁判離婚だ。この方法は、調停が決裂した後に、当事者が離婚訴訟を起こすという手順で進められる。裁判が始まると、当事者が法廷に出廷して主張や立証を行い、それを基に裁判官が離婚の可否や離婚条件について判決を言い渡す。大半のケースでは、裁判がある程度進んだ段階で裁判官が双方に和解を提案し、和解が成立しなかった時に判決が下されることになる。なお、離婚裁判では、「法律上の離婚原因」がなかったり、原因があっても十分にその事実を証明できなかったりすると、離婚が認められない恐れがある。
離婚の前にやるべき準備
離婚を決意した時、パートナーにいきなり別れ話を切り出すのは避けるべきだ。離婚にはそれぞれメリット、デメリットがあり、それを知らずに突っ走るとあとから悔むことにもなりかねない。また、パートナーの浮気やDVが原因で離婚する場合、慰謝料を請求できるが、事前にその証拠を集めておかないと、裁判で請求が認められないケースもある。離婚の手続きをする前にやるべき準備について解説する。
後悔しないかよく考える
パートナーの浮気や借金を知って頭に血が上り、すぐに離婚してしまう人がいるが、相手に対する愛情が残っている場合、あとから後悔することも少なくない。パートナーの裏切りに激しい怒りを覚えるのは、それだけパートナーに愛情を感じ、信頼していた証だとも言える。早まって離婚の決断を下す前に、自分の気持ちを冷静に見つめ直す時間を持つことが必要だ。また、離婚すると自分1人で生計を立てなければならなくなるため、結婚している時より生活水準が下がってしまう可能性もあるし、子供がいれば、離婚によって子供が精神的なショックを受けたり寂しい思いをしたりもするだろう。離婚のメリット・デメリットもきちんと考慮した上で、結論を出さなければならない。
夫婦仲が悪くなった原因を見極める
離婚すべきかどうかを考える際に、夫婦仲が上手くいかなくなった根本原因を見つめ直す作業も重要だ。性格の不一致が原因であるなら、相手の性格や行動のどこが嫌なのか、なぜそれを不快に感じるのかを自分に問いかけてみるのだ。それによって自分の感情や考えを整理することができ、問題の解決を図れるかもしれない。また、浮気などの問題がある場合は、パートナーと冷静に話し合い、なぜ浮気したのかを解き明かす機会を設けることも必要だ。浮気の原因には、セックスレスの問題や、家族から相手にされず孤独だったなど、パートナーの悩みが絡んでいるケースもある。浮気は許されない行為だが、家庭環境を変えることで、浮気の再発を防止できる可能性も高くなる。
経済的自立の準備をする
先ほども述べたが、離婚に当たって考えておかなければならないのが、生計の問題だ。特に、専業主婦で就労の経験や専門技能もない人だと、離婚してすぐに生計を支えられるような仕事に就くのは難しいだろう。自分が子供を引き取った場合は、さらに条件も厳しくなる。そのため、離婚を考え始めた時点で仕事探しも始め、離婚しても最低限の収入が維持できるようにしておく必要がある。また、離婚して家を出ていく場合は、新しい住まいに移らなければならず、引っ越し費用や家具・電化製品などの購入費用もかかる。離婚する前にできる限り自分の貯金を増やし、新生活を始められるだけの資金を確保しておかなければならない。
請求できるお金のリストアップ
離婚によって、自分が受け取ることのできるお金や資産がある。具体的には、財産分与、慰謝料、養育費などだ。財産分与とは、結婚生活中に夫婦で協力して築いた共有財産を、それぞれの貢献度に応じて分配することで、共有財産には、結婚後に建てた家などの不動産が含まれる。慰謝料は、浮気やDVが原因で離婚に至った場合、被害者が受けた精神的・肉体的苦痛に対して支払われる賠償金だ。養育費は、子供が成人するまで子供を監督・保護・教育するために親権者側に支払われる費用で、子供の数や支払う側の年収などによってその額が決まる。
何をどれぐらい受け取れるかは、それぞれの家庭の状況によって異なるので、請求できる可能性のある項目をすべてリストアップし、その金額も試算しておきたい。
浮気やDⅤの証拠を揃える
パートナーのDVや浮気が原因で夫婦関係が破たんした場合は、法律で規定している離婚理由となり、慰謝料を請求することができる。しかし、その事実を裏づける証拠がないと、裁判になった時に離婚請求や慰謝料請求を認めてもらえない恐れもある。そこで、離婚手続きを始める前に、法廷でも通用する確実な証拠を揃えておかなければならない。例えば、DVの証拠となるものは、怪我の写真や医師の診断書、DVを受けた時の音声・動画、警察への相談履歴やDVを受けたことを綴った日記などだ。
一方、浮気の証拠をつかむのは難しい。浮気を立証する決め手となるのは、パートナーが浮気相手とラブホテルなどに出入りするシーンを写真や動画で撮ったものだが、尾行や張り込みに気づかれると、相手が用心深くなり、それ以降、証拠をつかむことができなくなってしまう。そのリスクを避けるためには、探偵社などの浮気調査のプロの手を借りることも必要だろう。確実な証拠があれば、パートナーに慰謝料訴訟や離婚訴訟の用意があることを告げて反省を促し、浮気の再発を防止することもできるし、浮気相手に慰謝料を請求することも可能になる。
まとめ
性格の不一致をはじめ、パートナーの浮気やDV、モラハラなど、離婚の原因にはさまざまなものがあり、それを解決するのは困難に思えるかも知れない。しかし、その原因をさらに掘り下げると、夫婦の心の中の問題や家庭環境の問題が見えてくる時もあり、お互い歩み寄ることで関係を改善できる可能性もある。 もし、それが叶わなければ、離婚の道を選ぶことになるが、その際にも早まった行動に出るのではなく、離婚の手続きや、メリット・デメリットを十分に理解した上で準備を進めなければならない。特に、浮気やDVが原因で離婚する場合は、事前にその証拠を集めるなどの作業が必要になる。後悔することのないように冷静に考え、行動しよう。
監修者プロフィール
伊倉総合法律事務所
代表弁護士 伊倉 吉宣
- 2001年11月
- 司法書士試験合格
- 2002年3月
- 法政大学法学部法律学科卒業
- 2004年4月
- 中央大学法科大学院入学
- 2006年3月
- 中央大学法科大学院卒業
- 2006年9月
- 司法試験合格
- 2007年12月
- 弁護士登録(新60期)
- 2008年1月
- AZX総合法律事務所入所
- 2010年5月
- 平河総合法律事務所
(現カイロス総合法律事務所)
入所
- 2013年2月
- 伊倉総合法律事務所開設
- 2015年12月
- 株式会社Waqoo
社外監査役に就任(現任)
- 2016年12月
- 株式会社サイバーセキュリティクラウド
社外取締役に就任(現任)
- 2020年3月
- 社外取締役を務める株式会社サイバーセキュリティクラウドが東京証券取引所マザーズ市場に新規上場
- 2020年10月
- 株式会社Bsmo
社外監査役に就任(現任)
- 2021年6月
- 社外監査役を務める株式会社Waqooが東京証券取引所マザーズ市場に新規上場
- 2022年4月
- HRクラウド株式会社、
社外監査役に就任(現任)
※2023年11月16日現在
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