その他有責配偶者について知ることがパートナーとの結婚生活の継続につながる
最近、パートナーの様子がおかしい。パートナーの帰りが遅い日や出張が、なんだか増えた気がする。休みの日も仕事があるからと言うことが多くなり、仕事のつきあいがあるからと出かけたりすることが増えた。しかも、仕事のつきあいならと相手の名前を聞いたら「取引先の人の名前を言っても知らないだろ?」とか、「お前には関係ないだろう」とはぐらかされたり、逆ギレされそうになったりする。 また以前は、妻がさわれるところに無造作に置いていたスマホを、ここ最近は妻にさわらせようとしない。それどころか、トイレに行くときもスマホを持ったままだし、妻がちょっとでもスマホをさわろうとすると怒る。 これって、もしかして浮気? そんな疑問を少しでもパートナーに感じているならこの記事を読んでみてほしい。
1.有責配偶者とは?
有責配偶者(ゆうせきはいぐうしゃ)という言葉を聞いたことがあるだろうか。この記事を見つけるまでにネット上で「有責配偶者」という言葉を目にした人もいるかもしれないし、今この記事で初めて目にした人もいるかもしれない。
いずれにしても、パートナーの浮気を少しでも疑っているなら、続きを読んでおいて損はないはずだ。
2.有責配偶者についての基礎的知識
有責配偶者といっても初めて目にした人にはわかりにくく思えるかもしれないので、「有責」と「配偶者」に分けて説明しよう。
「有責」とは、あることに対して責任があること。「配偶者」は結婚している相手のこと。つまり、妻からみると夫が配偶者、夫からみると妻が配偶者だ。
では、有責配偶者とはいったい何か。「離婚の原因になるようなことをおこない、結婚生活を破たんさせる原因をつくった人」のことだ。結婚生活の破たんの原因としては浮気のほか、暴力やギャンブルなどがある。
有責配偶者とは男女のどちらかを指す言葉ではなく、夫が浮気をしていた場合は夫が有責配偶者、妻が浮気をしていた場合は妻が有責配偶者ということになる。
3.自分が有責配偶者になってしまったら
では、もし仮に、あなたが有責配偶者になったらどうなるか(仮に、の話なので怒らないでほしい)。有責配偶者は結婚生活を破たんさせる原因をつくった人だからだろう、厳密には罰とはいえないかもしれないが、デメリットが生じる。
一般に、有責配偶者からの離婚請求によって、離婚が成立することはない。それはそうだろう。浮気をしたり、暴力をふるったりするなど、離婚の原因をつくった者が、自分のほうから離婚請求をするのは、あまりにも身勝手だという印象を受ける。
これは、クリーンハンズの原則に基づいた考え方だ。英国に「公平を求めて裁判所に訴える者は、きれいな手で訴えなければならない」という法体系(法律のようなもの)があり、「クリーンハンズ」はこの「きれいな手」から来ている。
日本では民放第708条「不法原因給付」などがこれにあたり、わかりやすくいえば「違法行為をしている者を保護する必要はない」「悪いことをしている者に他人を訴える権利はない」といった意味合いだ。
つまり、有責配偶者が「離婚したい」と思って、有責配偶者のほうから離婚調停の申立てをしても、原則、裁判所が離婚を認めることはない。ほとんどの場合、離婚は不成立となる。
4.万が一の際は、相手を有責配偶者にする
ここで最初の話に戻ろう。ここまで有責配偶者の説明をしてきたが、そもそも主に伝えたかったのは、パートナーが浮気をしていると思われる場合の対応だ。
冒頭で、パートナーの浮気を疑っている状況の話をしたが、パートナーを有責配偶者にすることも検討したほうがいいかもしれない。
浮気をしたパートナーを必ず有責配偶者にするべき、ということではないが、浮気したパートナーから離婚を請求された場合は、パートナーを有責配偶者にすることで自衛手段となる可能性があるので知っておこう。
相手が有責配偶者であることを、自衛のための切り札にする方法を、順を追って説明する。
4-1.パートナーが浮気していると気づいたら
パートナーの浮気はうれしいことではないが、どう考えても疑いが晴れない場合は、夫(または妻)の行動を追跡する必要が出てくる。「浮気をしていないか」と直接、本人に質問できればいいが、なかなかそう簡単にはいかない。
実際に浮気をしていたとしても「はい、浮気をしています」と答える人は皆無に近いだろうし、浮気を疑う質問をしたことで逆ギレしたり、はぐらかされたり、 浮気相手と示しあわせてより巧妙に浮気をしたりする可能性もある。
一時的に大人しくなったように見えたとしても、少し時間がたつと浮気が復活するのはよくある話だ。パートナーが浮気をしても気にしないというならともかく、気になるほうが一般的だろう。そうであるなら、浮気の証拠をつかむための行動が必要だ。
4-2.浮気の証拠をつかむ
といっても、浮気の証拠をつかむのは容易ではない。特に、浮気を感づかれているかもしれないと思うと、人はより慎重に行動するようになるから。それに、もともと悪いことをやっているという意識も多少はあるので、バレないようにこっそりやっているわけだろう。
つまり、浮気の証拠をつかむのは、一般人である素人には極めてハードルが高い。そこでプロの手を借りるのも、ひとつの手だ。たとえば、浮気調査を得意とする探偵事務所に依頼するのはどうか。
探偵事務所に依頼するとしたら、一体いくらかかるのか。そう心配する人は少なくない。しかし業界最安値をアピールし、100%に近い高い調査成功率を誇る会社もある。
また、先にお金を取っておいて、いいかげんな調査をするのではないかと不安 に感じる人もいるだろう。そういう人は、調査終了後の「後払い制」を採用している探偵事務所もあるので、そういった会社を選ぶといいかもしれない。
浮気の証拠、いわゆる「不貞の証拠」というのは、「男女2人で会っている」「手をつないでいる」という程度ではダメ。「男女2人でラブホテルに入って相当時間出てこなかった」ことを証明できる写真などでないと、裁判で使える証拠にはならない。
相手に悟られずに尾行するのは素人には容易ではないし、まして、子どもがいる場合は、尾行のために家を長時間空けることがそもそも難しいだろう。浮気の証拠をおさえるなら、探偵会社に相談してみるのが現実的だろう。
4-3.浮気の証拠写真を有効利用する
きちんとした探偵事務所に浮気調査を依頼し、調査が完了すると1週間ほどで、証拠写真を含めた調査報告書が届く。これは、裁判所が認めているスタイルのもので、有責配偶者から離婚を請求された際の裁判にそのまま使える。つまり、裁判でパートナーの浮気を証明し、パートナーが有責配偶者であることを認めさせるための資料となるのだ。
5.浮気したパートナーから離婚請求をされても拒否するために
浮気や暴力などを行った夫(または妻)から離婚請求をされた場合、離婚拒否するための、具体的な手続きについて説明しよう。
5-1.浮気の証拠写真を用いて裁判にする
夫(または妻)が浮気を行ったことを示す、「不貞の証拠」となる写真などを裁判所に提出する。
5-2.有責配偶者に認定してもらう
有責配偶者に認定してもらう、というのは変な表現に思えるかもしれないが、裁判で「有責配偶者」と認定されることにより、浮気をした夫が「結婚生活を破たんさせる原因をつくった者」と公式に認められることになる。
もっとわかりやすくいうと、浮気した夫(または妻)に責任があると、裁判所が認めたということになる。
ここで1つ補足しておくが、たとえば、夫からのモラハラがひどかったために妻が不貞行為をおこなったというような場合、「夫と妻のうち、どちらが有責配偶者といえるのか」が問題になり、責任の割合を裁判所に判断を委(ゆだ)ねることもある。
5-3.夫(または妻)を有責配偶者にしたうえで結婚生活の継続をめざす
浮気した夫(または妻)を有責配偶者にすることで、条件を付けたうえで、結婚(婚姻)生活の継続をめざすことができる。有責配偶者からの離婚請求は原則的には認められないので、相手(夫、または妻)が有責配偶者であることを立証できれば、基本的に離婚は認められないことになる。
浮気の証拠写真を提示したとたん、「じゃあ、離婚しよう(しましょう)」と開き直って自分勝手な提案をしてくる相手(夫、または妻)もいる。その場で衝動的に発言する人もいれば、浮気相手と相談したうえで「離婚したい」と主張する人もいるが、有責配偶者からの離婚請求はそう簡単には認められないので、あなたが離婚を望まない限り、断固として姿勢で拒否することができる。
裁判所に直接行くのはハードルが高いと思った場合、弁護士に相談するのがいいだろう。弁護士に心当たりがない場合は、浮気の証拠をつかむために依頼した探偵会社に相談してみてもいい。弁護士が顧問を務めていたり、探偵会社が弁護士を紹介してくれたりするくれるケースも少なくない。
浮気の証拠写真などが使えるのは、いつまでか、この点について、ひとつ補足しておこう。浮気の証拠写真などが法的に有効なのは3年間だ。浮気を知ったときから3年間が有効期限であることを覚えておこう。浮気の証拠をつかんだらすぐに裁判などを起こなければならない、というわけではないが、浮気を知ったときから3年経過すると時効が成立することを肝に銘じておこう。
6.有責配偶者からの離婚請求が認められる場合
ただし、有責配偶者からの離婚請求が認められる場合も、ないわけではない。有責配偶者からの離婚請求はどんな場合なら認められることもあるのか、知識として、知っておいてもいいだろう。夫(または妻)から離婚を反対されても、有責配偶者からの離婚請求が認められる可能性が皆無というわけではないのだ。
たとえば、別居していたとしても、離婚が認められない限り、『婚姻費用』を支払い続けることになる可能性が高い。婚姻費用とは簡単にいえば、通常の結婚生活を維持するために必要な生活費のことだ。
有責配偶者の離婚請求はおおむね認められないが、次の3つの条件にすべて当てはまる場合は認められることもある。
6-1.夫婦の別居期間が、夫婦それぞれの年齢や同居期間と比べてかなりの長期間になる場合
「かなりの長期間」というのはあいまいな表現だが、有責配偶者からの離婚請求が実際に認められた判例としては10年・16年・22年・35年などがある。最も短いものでも6年なので、(どれくらいを長期間と感じるかは人によるが)、文字どおり、それなりの期間と考えるべきだろう。
別居が上記のような期間であっても、それ以外の理由から離婚が認められない場合もある。有責配偶者の責任に対する態度や行動、夫婦間の諸事情なども考慮されるし、実際は別居期間の長さだけを問題としているわけではないのだ。また、当事者間(夫婦間)に子どもがいる場合、養育費を毎月払い続けていたかという点も、有責配偶者からの離婚請求が認められるかどうかを判断する条件の1つになることもある。
6-2.当事者間(夫婦間)に未成熟の子どもがいない場合
これは離婚後の子どもへの影響を考えたものだろう。ただし、未成熟の子どもというのが未就学児(小学校入学前の子ども)や義務教育を終えていない子ども(中学3年生まで)を指す、というふうに明確な基準があるわけではない。
たとえば、20歳を超えても学生である子どももいれば、障害を抱えていて親のサポートがないと自活が難しい子どももいる。その一方、20歳未満でも仕事をしたり、結婚していたりする子どももいるので、これはケース・バイ・ケースといえる。
6-3.離婚によって、配偶者が過酷な状況におかれない場合
有責配偶者の収入によって家族の暮らしが支えられている場合、他の2つの条件をクリアしていても、この3つ目の条件に当てはまらないため、離婚請求は通りにくい。有責配偶者からの離婚請求が認められるためには、慰謝料や財産分与などによって、相手の生活をしっかりサポートしていく必要がある。
また、継続的な経済援助が可能だったとしても、精神的・社会的なダメージが大きいという理由で離婚請求が通らないこともある。
上記の3つの条件について知り、有責配偶者からの離婚請求が難しいことを理解しておく。そのことは、結婚生活を続けていくうえで、気持ちのゆとりにつながるかもしれない。
ちなみに、弁護士費用について具体的に述べることはできないが、慰謝料が減額できたか、親権がとれたかどうかなど、弁護士費用は変わってくる可能性もある。
7.なぜ有責配偶者からの離婚請求が認められることがあるのか【補足】
これは30年ほど前に行われた、ある裁判の判例が元になっている。
それは、夫婦が死ぬまで精神的、肉体的につながりを持って共に生活していくのが、結婚の本質ではあるが、結婚生活が破綻して、どうやっても回復の見込みがない場合は離婚するほうが自然である、と述べたものだ。当時としては、画期的な判例であっただろう。
この判例が出されたからといって、有責配偶者からの離婚請求が認められるようになったわけではないが、これを機に、場合によっては認められるようになったのだろう。
浮気したパートナーを有責配偶者にして、有責配偶者からの離婚請求は基本的に認められないというのは、道徳的に正しいだろう。とはいえ、上記のように、有責配偶者からの離婚請求が認められることもある、というのも時代の変化の現れなのだろう。
有責配偶者というのは、自分自身はできるだけならないほうがよく、基本的には結婚パートナーである相手もならないほうがいい。しかし、場合によっては相手を有責配偶者にすることで結婚生活を維持したり、強引な離婚を防いだりすることにつながる。そのような、使い方によっては価値のある制度だと考えればいいのだろう。もちろん、夫婦ともに有責配偶者にならずに、健全な結婚生活を続けていけるなら、それに越したことはない。
まとめ
有責配偶者についてある程度、わかったのではないだろうか。自分も、相手も有責配偶者にならずに、円満な夫婦生活が送ることをめざそう。結婚した以上、離婚せず、2人仲良く暮らしていけるのが理想的。とはいっても、そうはいかないこともあるのが人間だ。 どうがんばっても関係の修復は難しい、パートナーに浮気を問いただすわけにもいかないし、無理に答えさせようとすると逆ギレされて暴力をふるわれたりする。 そのような心配があり、自分だけでは解決できない結婚生活の悩みがあるなら、一度、探偵事務所に相談してみるのもいいだろう。心ある探偵事務所なら、なにがなんでも浮気調査をさせて費用を発生させようとするのではなく、親身になって相談に乗り、まずは元通りの結婚生活ができるよう、前向きな手助けをしてくれるはずだ。
監修者プロフィール
伊倉総合法律事務所
代表弁護士 伊倉 吉宣
- 2001年11月
- 司法書士試験合格
- 2002年3月
- 法政大学法学部法律学科卒業
- 2004年4月
- 中央大学法科大学院入学
- 2006年3月
- 中央大学法科大学院卒業
- 2006年9月
- 司法試験合格
- 2007年12月
- 弁護士登録(新60期)
- 2008年1月
- AZX総合法律事務所入所
- 2010年5月
- 平河総合法律事務所
(現カイロス総合法律事務所)
入所
- 2013年2月
- 伊倉総合法律事務所開設
- 2015年12月
- 株式会社Waqoo
社外監査役に就任(現任)
- 2016年12月
- 株式会社サイバーセキュリティクラウド
社外取締役に就任(現任)
- 2020年3月
- 社外取締役を務める株式会社サイバーセキュリティクラウドが東京証券取引所マザーズ市場に新規上場
- 2020年10月
- 株式会社Bsmo
社外監査役に就任(現任)
- 2021年6月
- 社外監査役を務める株式会社Waqooが東京証券取引所マザーズ市場に新規上場
- 2022年4月
- HRクラウド株式会社、
社外監査役に就任(現任)
※2023年11月16日現在
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