その他旦那が突然失踪! その時、妻がやるべきことは?
ドラマなどでは、よく失踪事件が描かれたりするが、それが身近で起きるとは思っていない人も多いだろう。しかし、警察庁のデータを見ると、毎年7万件以上の行方不明届けが出されており、そのうち夫が行方不明になったケースが約2万件。失踪事件は、決してドラマの世界だけの話ではないのだ。 もし、自分の夫がある日、家に帰らず、連絡も取れないとなったらどうだろう? いつも飲み歩いて友人のところに泊まっているような夫ならいざ知らず、会社が終わったら真っすぐ帰宅しているような真面目な夫が帰ってこなければ、一晩だけのことであっても心配で居ても立っても居られないはずだ。ましてや、夫がそのまま行方不明にでもなったら、途方に暮れてしまうだろう。 しかし、不安におびえながら夫の帰りを待っているだけでは、問題は解決しない。夫が行方不明になる原因や、夫の失踪がわかった時にやるべきこと、失踪を防ぐ方法などについて解説する。
夫が失踪する原因
夫が家に帰らず、連絡も取れないと、「夫の身に何かあったのかも知れない」と不安になってしまうだろう。もちろん、夫が酔いつぶれて同僚の家にでも泊ったのなら、翌日には連絡が来るはずだ。たとえ、泥酔してスマホをなくしたような場合でも、同僚のスマホを借りるなりなんなり、連絡する方法はいくらでもあるからだ。
そういったケースであれば、すぐに家に帰ってくるだろうし、夫も「酔いつぶれて連絡できなかった」などと弁解するだろう。しかし、その弁解を鵜呑みにするのは、危険かもしれない。何か別の理由があって家に帰らなかった可能性もあるし、本当は失踪するつもりだったのに気が変わって一晩で帰ってきたということも考えられるからだ。
失踪事件には、複雑な事情や心理が関わっていることも多い。夫が失踪する原因を探っていく。
仕事が嫌になった
夫の失踪で考えられる原因の1つが、職場や仕事に関するトラブルだ。警視庁の原因・動機別の行方不明者の統計を見ても、事業・職業関係で行方不明になった人の数は、全体の10%を超えている。
職場では、さまざまなストレスを受ける。ノルマが厳しく、強いプレッシャーを感じていたり、上司からのモラハラやパワハラに悩まされたり、会社がブラック企業で法定労働時間を超えるような残業をさせられていたりすると、心身ともに疲れ切って精神的に追い詰められていく。その時、誰かに相談できればいいが、身近にそういう人がいなかったり、「人に迷惑をかけたくない」という気持ちが強いと、ストレスが限界を超え、現実から逃避してしまうのだ。
仕事のストレスが原因での行方不明の場合、自殺を図るケースも少なくないため、出来る限り早く見つけ出すことが必要だ。
家に居場所がない
家庭問題も、失踪原因の上位にあげられる。会社では勤勉で有能な社員としてその能力を評価されているのに、家では家族を顧みないダメな夫・ダメな父親と見下され、うとんじられている人がいる。本人は、家族が不自由なく暮らせるように頑張って働いているつもりなのに、その努力が認められないどころか、文句ばかり言われて邪魔者扱いされていると、家に自分の居場所がないように感じてしまうだろう。
特に、妻の暴言やDVがひどいと、夫が「帰宅恐怖症」になることもある。帰宅恐怖症は、文字通り、「家に帰るのが怖い」、「家に帰りたくない」などと家に帰ることに苦痛を感じる症状で、仕事は終わっているのに残業を引き延ばしたり、どこかで時間を潰してから家に帰ったりして、妻との接触を極力避けるようとする。さらに症状が悪化すると、家出をする可能性もあるので気をつけなければならない。
妻がかまってくれず寂しい
妻が自分をかまってくれないことに不満を抱いている夫もいる。例えば、結婚当初は夫婦2人だけの生活だったため、夫にすべての愛情を注いでいた妻が、子供が生まれてからは育児に関心が向いてしまうのはよくある話だ。子供が幼い頃は、一日中面倒を見なければならないし、成長しても習い事や部活のサポートなどに追われることもある。そんな妻を見て、「自分への愛情がなくなってしまったのではないか」と不安や寂しさを募らせ、家を出ていく夫もいるのだ。
また、育児の話は抜きにしても、歳月を経るにつれてスキンシップやコミュニケーションが減っていく夫婦は珍しくない。一番身近にいる人とコミュニケーションが取れないという状況が、一層孤独感を増幅させ、心の中にぽっかり穴が開いたような気持になることもあるだろう。そんな時に、自分のことを気にかけてくれるような女性に出会ったら、家を出てその相手と暮らしたいと思うようになるかも知れない。
夫婦喧嘩
夫婦喧嘩をして、夫が家を飛び出すというパターンはよくある。その喧嘩が、他愛ない理由で起きたのなら、夫がカプセルホテルや友人の家などに泊まってクールダウンし、1日か2日で帰ってくるというのが一般的だろう。しばらくは、夫婦の間がギクシャクして冷戦状態になるかも知れないが、いずれは仲直りするきっかけもできるはずだ。
しかし、性格の不一致やモラハラなど、以前から根深い問題があった場合は、そう簡単にはいかないかも知れない。お互い相手に対して溜め込んできた不満が爆発して喧嘩になったのであれば、家を飛び出した夫がそのまま帰ってこず、離婚や自殺に発展することも考えられる。そのような不安がある時は、夫の居場所だけは把握しておくようにしたい。
浮気
夫が以前から浮気しているような場合は、ホテルや浮気相手の家に泊まったり、2人で旅行を楽しんだりしているのかも知れない。そのような時でも、「急な出張が入った」などとカモフラージュの連絡ぐらいは入れられそうなものだが、妻から問い詰められるのを恐れていることも考えられるし、浮気相手が邪魔をして連絡させないようにしている可能性もあり得る。
さらに、夫が無断外泊を繰り返したり、何日も帰ってこなくなったりした場合、浮気相手に本気になってしまっている恐れもある。そういう時、夫をヒステリックに責め立てると、浮気相手にますます気持ちが傾き、家に寄り付かなくなる危険性もあるので、まずは冷静に対処し、状況を見極めなければならない。
離婚しようとしている
夫が、浮気相手と一緒に暮らしたい、あるいは家庭生活を続けることが耐えられず、新しい人生を始めたいと思っていたのだとしたら、ある日突然消息を絶ち、2度と家に帰ってこなくなることも十分考えられる。そのようなケースでは、夫がスマホを変えたり着信拒否にしたりして、連絡が取れないようにした挙句、一方的に離婚届を送ってくるということも珍しくない。
民法では、パートナーの浮気によって夫婦関係が破たんした場合や、特別な理由がないのに同居の義務を放棄した場合、原則パートナーの方からは離婚を請求できないことになっている。しかし、最近では、別居期間が長くなると「夫婦関係の修復が困難」と見なされ、離婚が認められるケースもあるので要注意だ。
借金が返せなくなった
ギャンブル好きの夫が、密かに借金を重ね、とうとう首が回らなくなって失踪するというパターンもある。特に、ギャンブル依存症になると脳が機能不全に陥り、「借金をしてもギャンブルを続けたい」「止めようとしても止められない」という状態になってしまう。
最初のうちは、ポケットマネーの範囲で収まっていたのが、負けが込んで借金に手を出し、それがどんどん増えていく。借金していることが妻にバレるのを恐れて、借金を借金で返す悪循環を繰り返し、返済能力を超える額にまで膨れ上がる。当然、周りの知り合いからも借りるだけ借りて、お金を返す目途も立たないので、失踪という手段を選ぶのだ。
事件・事故
最近は、電車内で無差別殺傷事件が起きるなど、考えもしないような犯罪が発生している。誰からも恨みを買いそうにない人でも、そういう事件に巻き込まれるケースがあるのだ。もちろん、夫が大きな事件や事故に巻き込まれたのなら、すぐに警察が動き、身元確認をして妻に連絡してくれるだろう。
しかし、物陰に連れ込まれて暴行されたり、人通りの少ないところでひき逃げされたりして倒れていると、発見されるまでに時間がかかる。普段真面目で羽目を外すこともないような夫が家に帰らず、連絡も取れないような時は、トラブルに巻き込まれた可能性も考えた方がいいだろう。
病気
夫が認知症やうつ病にかかっている可能性がある場合は、病気が原因で行方不明になることも考えられる。警視庁の統計でも、疾病による行方不明者の数は全体の3割近くに上っており、最も多いのが認知症によるものだ。夫が高齢ならばもちろんのこと、20代30代でも若年性認知症を発症する人がいて、記憶障害になったり、自分のいる場所がわからなくなったりすることがある。
また、うつ病を患っている人も、会社を長く休んだりしているうちに、家族に対する後ろめたさから家出してしまうことがある。うつ病は、初期段階でも自殺願望があるため、早急に探し出さなければならない。
まずやるべきこと
警察庁の統計によると、捜索願が出されてから行方不明者が見つかるまでの期間は、当日が46.8%、2~7日が34.1%。行方不明者の約80%は、届出から1週間以内に発見されていることになるが、逆に1週間を過ぎた場合、発見できる確率は極端に低くなる。つまり、行方不明者の捜索は、初動が非常に大切なのだ。
もちろん、夫婦喧嘩をしたあと夫が出て行ったなど、原因がはっきりしている場合は、失踪の可能性は低いだろうが、それでも2日以上帰ってこないようであれば、所在や安否確認はしておいた方がいいだろう。また、友人の家に泊まることが多いような夫であっても、「いつものことだから」と放ったらかしにするのは考えものだ。夫が事件・事故に巻き込まれている可能性も、ないとは言えないからだ。
夫が家に帰らなかった時に、まずやるべきことをピックアップする。
身内や知人に連絡する
夫が帰宅せず、連絡もつかない場合は、共通の知人や、夫が親しくしている友人に連絡を入れてみよう。夫が行きそうな場所を教えてくれるかもしれないし、自分が知らなかった夫の悩みや最近の状況がわかるかも知れない。翌日まで夫と連絡が取れなかったら、職場に電話して夫が出社しているかどうか確認することが必要だ。もしかすると、夫が自分に隠して無断欠勤していたり、会社を辞めていたということもあり得る。
その場合は、職場に協力をお願いし、最近仕事のトラブルがなかったかなど、夫が行方不明になる前の様子を教えてもらうようにしなければならない。また、夫が他に行く場所がなくて実家に逃げ込んでいたというケースもあるが、いきなり問い詰めるようなことはせず、「無事で安心した。帰りを待っている」と伝えるぐらいにとどめよう。
家の中を確認する
家の中を調べることで、失踪の手がかりがつかめることもある。男性は、女性のように衣類を持ち出すことは少ないかもしれないが、通帳や印鑑、いつも飲んでいる薬などがなくなっている場合、長期的な家出を計画していた可能性が考えられる。
また、パソコンが残されていて開ける状態であれば、インターネットの閲覧履歴やメールから宿泊場所や新幹線・飛行機の予約内容を調べ、行き先を予測することができるかも知れない。他にも、夫が普段使っている引き出しやゴミ箱に手がかりが残されている可能性もある。督促状があれば、借金トラブルを抱えていたのかも知れないし、ホテルのレシートが見つかれば、浮気相手とそこに泊まっていたことも考えられる。
夫の行きそうな場所を探す
突発的な家出や夫婦喧嘩などによって家を飛び出した場合、夫が普段出入りしている場所で見つかることがある。例えば、行きつけの飲食店や最寄り駅の近くのパチンコ店、カプセルホテルやビジネスホテル、宿泊できるサウナ、ネットカフェなどなど。夫の写真を持って、店員に聞き込みをするのも1つの方法だ。
また、何か口実を設けて実家や友人の家に泊めてもらっているケースもあるし、車で家出した場合は自宅近くのコインパーキングで車中泊をしているかも知れない。夫が浮気していたとしたら、浮気相手の家やラブホテルに2人で泊っている可能性もある。
SNSを確認する
もし、夫がFacebookやTwitterを利用しているのであれば、タイムラインをチェックしてみれば、何か手がかりがつかめるかも知れない。現在は、FacebookやTwitter 、Instagram、LINEなどに写真を投稿しても、埋め込まれた位置情報は自動的に削除されてしまう。
しかし、写真の背景に映り込んだものの中から、居場所の特定につながるような情報が得られるかもしれないし、過去の投稿を調べれば、夫が行きそうな場所を割り出せる可能性もある。
失踪ではないかと思ったらやるべきこと
男性は、他人に弱みを見せるのを嫌う傾向が強いと言われる。そのため、悩みを一人で抱え込み、追い詰められた結果、家出したり自殺に走ってしまうケースも数多く見られる。夫がいなくなったあと、書き置きのようなものを見つけた場合はもちろんのこと、夫と最後に話した時に何かおかしな様子だったと感じたら、早急に手を打たなければならない。
また、浮気相手とともに行方をくらませた可能性がある場合は、その責任を取らせる算段をしなければならないし、失踪が長期化すれば、離婚や家族の生活を守る方法も考えなければならない。夫が失踪したのではないかと思った時に打つべき手や、法的措置について解説する。
捜索願を出す
夫が失踪する原因に心当たりがなく、知人や会社に連絡しても居場所がわからないような時は、すぐに警察に行き、「行方不明者届」という書類を書いて届出するようにしよう。行方不明者届は、昔、「捜索願」と呼ばれていたもので、警察がそれを受理すると、捜索が開始される。
ただし、失踪した夫が、事件性や自殺の危険性のある特異行方不明者でなければ、警察が積極的に動いてくれない可能性もある。特に、家に「失踪宣告書」が残されていたような場合は、特異行方不明者とは見なされにくい。失踪宣告書とは、「探さないでください」「顔も見たくないので家を出る」など、本人の意志で失踪したことがわかる書き置きだ。
しかし、そうようなケースでも、行方不明者届を出す意味はある。届出をしておくことで警察のデータベースに情報登録されるため、万が一事故・事件に巻き込まれた場合、すぐに連絡してもらえる可能性があるからだ。
調査をする
夫が自分の意志で計画的に失踪したようなら、警察の捜査は当てにできないかも知れないので、信頼できる探偵事務所などに調査を依頼することも考えよう。全国に拠点を持つ大手事務所であれば、広範囲の捜索も可能なため、夫を見つけ出せる確率も高くなるし、自宅に残された素人では気づかない痕跡から、夫の居場所の手がかりをつかむ場合もある。
また、夫が浮気相手と一緒にいるようなケースでは、夫の所在を突き止めるとともに、浮気相手の名前や家も調べることができる。そうなれば、夫の失踪事件と同時に、浮気問題の解決も図れるはずだ。
金の動きをチェックする
夫の銀行口座やクレジットカードの履歴を調べ、お金の動きをチェックしてみるのも有効な手段だ。銀行口座からキャッシュが引き出されていれば、その時点で夫が無事であることが確認できる。クレジットカードの利用履歴は、他人は見ることができないが、家族カードを持っていれば、カード会社のサイトで履歴が見られ、夫がいつ・どんな店でカードを使ったかがわかる。ネットで検索すれば、店の場所も特定できる可能性があるので、夫の足取りをつかむのに役立つだろう。
また、夫の給与の情報については、勤め先にも確認しておいた方がいい。夫が給与の振込先を変更させていることも考えられるし、給料が借金などの差し押さえにあっている場合もある。
夫の口座に送金して様子を見る
失踪した夫の口座やクレジットカードが使用されている場合、あえてお金を少しずつ送金し、様子を見るという方法もある。計画的に家出したなら生活資金も用意しているだろうが、衝動的に家を飛び出したような場合は、口座の残金が尽きると家に帰る交通費すらなくなってしまう。そうなると、路上生活や盗みをするようになったり、追い詰められて自殺を図ったりする恐れも出てくる。
そういう事態を避けるためにも、一週間暮らせるぐらいのお金を送金しながら、状況を見守るようにしたい。それによって、「とにかく無事に帰ってきてほしい」という思いを伝えることができるし、口座やクレジットカードの利用履歴から夫の居場所も突き止めやすくなるだろう。
住民票や戸籍を調べる
夫を捜索する上で、ぜひ確認しておきたいのが住民票や戸籍だ。夫がアパートなどを借りて移り住んだような場合、新しい住所に住民票を移す可能性がある。正当な理由もなしに住民票を移さないでいると罪に問われるし、自治体の公的サービスや補助金も受けられなくなるからだ。
一方、戸籍を調べてみると、夫が認知した浮気相手の子供が記載されていたり、自分の新しい生活を知られないように夫が戸籍から抜けていたりするケースもある。しかし、元の戸籍には、移動した先の本籍地も記載されるようになっており、それを見れば夫の行方を追う手がかりを得ることができる。
浮気なら慰謝料請求や離婚請求をする
浮気が原因で夫が失踪したのなら、浮気相手の氏名や自宅が特定できれば慰謝料を請求できる。相手は慰謝料の支払いを拒否するかもしれないが、調査によってラブホテルや浮気相手の家に2人で泊った証拠がつかめれば、裁判に持ち込んで支払いを命じることができる。自分が訴えられると知って浮気相手が驚き、慌てて夫と手を切るというケースもよくあるので、慰謝料請求は浮気防止にも役立つ。
また、夫の浮気をどうしても許せないというのなら、夫から慰謝料を取って離婚することもできる。この場合も、浮気を裏づける証拠があれば、夫が拒否しても裁判で離婚を勝ち取れるだろう。
離婚したくなければ離婚届不受理申出をする
夫と離婚したくないのであれば、離婚届不受理の申出をしておいた方がいいだろう。離婚届不受理申出とは、本人の同意なく提出された離婚届を受理しないことを役所に申し出るものだ。
浮気している夫の中には、妻と別れて浮気相手と一緒になるために、離婚届に勝手に妻の分まで署名・押印して役所に提出する者もいる。役所では、妻本人が署名・押印したかどうかまではチェックしないので、その離婚届が受理されると、離婚が成立してしまう。しかし、離婚届不受理申出をしておけば、申出をした本人以外が離婚届を出しても役所が受け付けないので、夫の不正を防ぐことができる。
3年間生死不明なら離婚できる
夫が失踪したままの状態だと、離婚の話し合いもできず、再婚することもできない。そのような問題を解消するために、民法では「配偶者の生死が3年以上明らかでないこと」を離婚が認められる要件の1つとして設けている。具体的には、配偶者が失踪したきり何の連絡もなく、また配偶者が生きているという情報も入らないまま3年以上経ったら、離婚を申し立てることができるのだ。
提訴の際には、夫を探したが見つからなかったという調査報告書や、夫の実家や知人の陳述書を提出して裁判に入るが、被告である夫は当然現れないため、遅滞なく裁判が進み、1、2カ月後には判決が下ることになる。
7年間生死不明なら失踪宣告をする
夫が失踪し、生死不明のまま7年が経った場合、裁判所に申し立てて「失踪宣告」をすることができる。失踪宣告とは、法律上、生死不明者を死亡したと見なす制度で、失踪宣告をすれば、夫と死別したことになるため、妻の再婚が可能になる。3年間生死不明の場合と異なるのは、裁判を経なくても婚姻解消の手続きができることだ。
さらに、3年間生死不明での離婚とは違い、失踪宣告をすれば、夫の遺産の相続や、死亡保険、年金の一時死亡金を受け取れるようになる。失踪宣告をして妻が再婚した後、夫の生存がわかったとしても、新しい配偶者との結婚が優先されることになるが、手元にある遺産の残額については返還しなければならない。
夫を失踪させないために
捜索によって夫が見つかり、家に帰ってきた時は、夫に失踪を繰り返させないようにしなければならない。また、夫が家を出ていきたがっているのではないかと感じた時にも、失踪を未然に防ぐような工夫が必要になる。
いずれにしても、夫が失踪という行動に出るのには、さまざまな事情や心理状態が絡んでおり、家庭環境や夫婦関係が一因になっている可能性もある。特に、悩みを1人で抱え込むタイプの夫に対しては、感情的に責め立てても逆効果になるだけで、ますます心を閉ざしてしまう恐れもあるので、あくまで冷静に考え、行動しなければならない。夫婦関係を改善し、夫の失踪を防ぐための方法を紹介する。
夫婦で話し合う
夫が家に帰ってきた時、いきなり夫を問い詰めるようなことをしてはならない。「やはり自分の気持ちは妻には理解してもらえないのだ」と感じ、再び家を出ていくことにもなりかねないからだ。もちろん、夫が失踪している間、妻は散々心配しただろうし、辛い思いもしただろうが、夫の方も妻に打ち明けられない悩みを抱え込んでいたのかも知れない。
まずは、夫が体を休め、気持ちが落ち着くのを待って、失踪した理由を冷静に聞いていこう。夫は身勝手な言い訳を始めるかも知れないが、その裏に本人が言葉で上手く言い表せないストレスや不満が隠れている場合もある。原因をきちんと究明し、夫婦関係の改善を図ろう。
誓約書を書かせる
浮気が原因で夫が失踪していたのなら、夫と浮気相手に「2度と浮気をしない」という誓約書を書かせる方法もある。誓約書を書いても、絶対に浮気を防げるわけではないが、誓約書は浮気の事実を明らかにする証拠となるため、後々裁判になった時も慰謝料請求や離婚請求に使うことができる。
また、「再び夫に接触したら違約金を支払う」という条項を入れておけば、浮気相手が約束を破った時に、裁判に訴えることができるので、浮気の再発を抑止する効果も発揮するはずだ。
居心地のいい家庭を作る
夫と話し合った結果、お互いどんな不満を持っているのかがわかったら、2人で協力してそれを解消するように努めよう。性格の不一致が原因なら、相手のどんな態度や行動を不快に感じるのかを率直に伝え合うことで、お互いに自分の態度・行動を改めるなど、歩み寄りができるかも知れない。
また、相手に感謝の気持ちを伝えることも重要だ。結婚生活が長くなると、パートナーがいつも自分や家族のためにしていることを「やって当たり前」と思ったりするようになる。折に触れて「ありがとう」と感謝の言葉を口にして、お互いにとって居心地のいい家庭にしていこう。
コミュニケーションを取る
夫婦の気持ちのすれ違いは、コミュニケーション不足から起きるケースが多い。自分の想いや悩みを口にしなかったり、相手が聞いてくれない状況が続くと、不満が積もり積もってある日爆発してしまう。普段から、その日あったことや自分が感じたことなど、些細なことでも話す習慣をつけておけば、夫婦の心の距離も縮まるだろう。
そうなれば、悩み事ができた時もフランクに話せるし、パートナーの様子がおかしければ、すぐに気づいてケアできるので、失踪を未然に防げるはずだ。ただし、自分の話ばかりして相手の話を聞かなかったり、相手の意見を頭から否定したりするのは逆効果になるので気をつけたい。
まとめ
ある日突然、夫が帰ってこなくなったら妻は動転し、不安に駆られるだろう。ましてや、夫がそのまま行方不明にでもなったら大ごとだ。しかし、妻にとっては青天の霹靂であっても、夫の方では失踪しなければならないような原因をずっと抱えていて、それがついに限界に達したのかも知れない。耐えきれないほどの仕事のストレスや、家庭に対する長年の不満、返済できなくなった秘密の借金、さらには浮気をしていた相手と一緒になるために失踪するというケースもある。 どんな事情があるにしろ、夫が失踪したままでは、生活が成り立たなくなる恐れもあるので、早急に対処しなければならない。まずは、身近なところを探し、それでも行方がわからなければ警察に相談するべきだ。ただし、失踪に事件性や自殺の危険がなければ、警察が積極的に捜索してくれない場合もある。 そのため、警察に捜索願を出すのと同時に、探偵社などに捜索調査を依頼することも考えなければならない。また、浮気が原因なのであれば、その証拠をつかむことで慰謝料などを請求することもできる。一刻も早く、夫の所在と失踪原因を突き止め、問題解決を図ろう。
監修者プロフィール
伊倉総合法律事務所
代表弁護士 伊倉 吉宣
- 2001年11月
- 司法書士試験合格
- 2002年3月
- 法政大学法学部法律学科卒業
- 2004年4月
- 中央大学法科大学院入学
- 2006年3月
- 中央大学法科大学院卒業
- 2006年9月
- 司法試験合格
- 2007年12月
- 弁護士登録(新60期)
- 2008年1月
- AZX総合法律事務所入所
- 2010年5月
- 平河総合法律事務所
(現カイロス総合法律事務所)
入所
- 2013年2月
- 伊倉総合法律事務所開設
- 2015年12月
- 株式会社Waqoo
社外監査役に就任(現任)
- 2016年12月
- 株式会社サイバーセキュリティクラウド
社外取締役に就任(現任)
- 2020年3月
- 社外取締役を務める株式会社サイバーセキュリティクラウドが東京証券取引所マザーズ市場に新規上場
- 2020年10月
- 株式会社Bsmo
社外監査役に就任(現任)
- 2021年6月
- 社外監査役を務める株式会社Waqooが東京証券取引所マザーズ市場に新規上場
- 2022年4月
- HRクラウド株式会社、
社外監査役に就任(現任)
※2023年11月16日現在
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